大垣市の2015年の国勢調査人口は15万9,879人と1985年を僅かに上回っている(図表4)。内訳をみると、就業者数が減っていないことがわかる。石巻市に比べると、元々農林漁業の従事者が非常に少ない。工場労働者、建設作業員は石巻市と同様に減少しているが、その代わり、専門技術職が増えている。就業者数の減少がほとんどないため、15歳未満人口の減少も少子化以上の影響を受けていない。大垣市には同市に本社を擁する東証1部上場企業が4社あり、この人口クラスでは多い。生産工程を主とする製造業は落ち込んでいるのだがそれ以外の産業がサービス業中心に伸びている。
放っておくと地方都市の人口は減る
わが国の産業構造を俯瞰するに農林漁業、そして工場生産を主とする製造業がピークアウトして久しい。公共事業の抑制を背景に建設業も縮小している。2015年の15歳以上就業者数は5,892万人だった。1985年と比べた増加率は1%であり、30年前とそれほど大きな違いはない。
しかし就業者の業種は大きく変わった。「地場産業」と言うように業種には地理的な偏りが大きい。このことを反映し、衰退産業を基幹産業とする地域の人口は確かに減少している。成長産業が元々盛んだった地域、または時代に合わせて成長産業への転換を図った地域の人口は横ばいを保つか、または増えている。
目下成長しているのはITに代表するような情報産業だ。同じ製造業でもかつての生産工程から研究開発、販売および関連サービス業のウェイトが移ってきている。そういう産業に有利な立地は、昔から出版、印刷業を地場産業としていた東京である。情報化と国際化の時代は産業も人口も東京に一極集中する。
冒頭述べたように都心の通勤者の誘致競争の渦中にある街は別である。それ以外の、このまま放置していれば「消え去る街」になりそうな地方の中堅都市に関していえば、中心市街地の再開発も街の魅力の向上に欠かせないものの、それ以上に、成長分野の雇用を増やすほうが重要と思われる。