給料ファーストではない会社探し

【田原】さて、いよいよ独立して2012年、「ウォンテッドリー」というサービスをはじめる。これは求人サイトだそうですね。

【仲】着想はフェイスブックでした。フェイスブックが革新的だったのは、いままで匿名が中心だったインターネットの世界に、実名制を持ち込んだこと。その結果、経済的にも政治的にも個人が強くなった。自分も実名制のサービスをやろうと。

【田原】実名で個人が強くなるって、どういうことですか?

【仲】匿名の時代は、たとえば新商品のドリンクを飲んでまずいと思ってネット上で発信しても、あまり信頼されなかったですよね。でも、実名で発信すれば、匿名より信頼性が高い。そうやって一人ひとりが実名で発信していくと、ウン億円使ってテレビCMを打っても消費者をコントロールできなくなる。政治だってそうです。アラブの春も、チュニジアで起きたことが実名制のパワーでアラブ諸国に広がりました。これはすごいなと。

【田原】なるほど。

【仲】最初は実名制で質問ができるサイトをつくろうと考えました。たとえば「おすすめのレストランはどこですか」とか、「おもしろい本を教えてください」とか。それがちょっとずつ進化して、最終的に「誰かいい人いませんか」と実名のつながりで人を探す「ウォンテッドリー」になりました。

【田原】このサービスはほかの求人サイトと何が違うのですか。

【仲】2点あります。1点目は、給料や福利厚生が書いてないこと。2点目は、いきなり履歴書を出して面接ではなく、まず会社に遊びにいって、コーヒーとかランチしながらお互いのことを話してもらいます。恋愛にたとえるなら、いきなり結婚するのではなくて、まずデートから入りましょうと。

【田原】まず気軽に会うのはいいけど、給料や福利厚生はわからなくていいのかな。お金は大事じゃない?

【仲】大事です。でも、給料を入り口にするのではなく、デートして気に入ったら話し合ってもらえばいいかなと。結婚でもお金は重要ですが、最初に年収から入るとやっぱり失敗しやすいですよね。まず相手を好きかどうかで選んで、それから条件のすり合わせをしたほうがいい。

【田原】そうですか。給料は大事だけど、後でその話をするわけね。