この直角二等辺三角形と宇宙の関係を知ったことで、中学時代の俳句の謎が解けたのだ。直角二等辺三角形には、白銀比が現れる。二等辺をそれぞれ「1」とすると、斜辺は√2(1.414……)だ。つまり、「1対√2対1」である。これを整数比に表すと、およそ「5対7対5」になる。

そう、俳句と同じなのだ。俳句は直角二等辺三角形に収まるのである。芭蕉はおそらく、自分の見た風景や、感じたことなど膨大な情報を、5・7・5の17文字の中に圧縮して表現したのだろう。

ここに宇宙の永遠が関係してくる。俳句はムダを徹底して省き、削ぎ落としたエッセンスが17文字に込められている。それは同時に全体を表しているのだ。驚くべき圧縮技術ではないか。なるほど、俳句が「世界最小の文学」といわれるゆえんである。

この圧縮された情報を、我々はどうやって解凍するのか。それは「心」である。我々の心に入った瞬間に解凍され、芭蕉の見た風景、情景が再現されるのだ。そのことに中学時代の私は驚いたのだと思う。

未生斎一甫は花を直角二等辺三角形に生け、松尾芭蕉は言葉を直角二等辺三角形に配置した。まったく違う芸術である華道と俳句だが、彼らはきっと直角二等辺三角形に何かを感じ取っていたのではないかと、私は考えている。

(構成=田之上 信)
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