「平均年収600万円の企業」と聞いて、どんなイメージを持つだろうか。ビジネス数学教育家の深沢真太郎さんは「年収600万円の人が多いとは限らない。平均値にだまされないためには、中央値と最小値(最大値)を確かめる必要がある」という――。(第2回)

※本稿は、深沢真太郎『数字にだまされない本』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。

計算
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多くの人が理解できていない「平均」という概念

「当社の平均年齢は40歳です」

この1行を読んだ瞬間に、この会社には40歳の人(あるいはアラフォーの人)がいると思った方は要注意です。平均値にだまされているかもしれません。そもそも、平均とはなんでしょうか。

私は企業研修の中で、参加者にこの質問をすることがあります。小学生ならまだしも、ビジネスパーソンに「平均とは何か?」と尋ねるなんて、失礼な講師だと思う方がいるかもしれません。でも私は真剣に、この問いを投げかけています。多くの方の答えは次のようなものです。

「データを全部足し算して、その個数で割り算したもの」

しかし、これは平均値の求め方であって、平均とは何かを説明していることにはなりません。そこで再び研修の参加者に「計算方法ではなく、平均の意味を説明してみてください」と尋ねると、ほとんどの方がこのように答えます。

「真ん中あたりのデータのこと」

おっしゃりたいことや描いているイメージはよくわかります。ただ、平均の意味が「真ん中」であれば、中央値と呼ぶほうが正しいのではないでしょうか。

なぜ私たちは実際には「平均値」という名称を使うのか。その理由を説明しましょう。平均とは文字通り「平らにならした」という意味です。体操競技の平均台を想像してみてください。平らに均した台だから平均台なのです。具体例で考えてみましょう。