平均年齢は存在しても、平均年齢の人がいない可能性がある

従業員4人の会社があるとします。メンバーと年齢は社長(78歳)、管理職(32歳)、中堅社員(28歳)、新人社員(22歳)です。4人の平均年齢は40歳になりますが、これは4つの数字の凹凸を平らに均した値に他なりません。そして大事なことは、この会社に40歳の人(あるいはアラフォーの人)はいないという事実です。

【図表1】平均とは凹凸を平らに均した値
平均とは凹凸を平らに均した値(出所=『数字にだまされない本』)

この事実が教えてくれることはひとつです。

平均年齢。実際はその年齢の人はいない可能性がある。
平均年収。実際はその収入の人はいない可能性がある。
平均点。実際はその点数を取った人はいない可能性がある。
平均購入価格。実際はその金額で購入したお客様はいない可能性がある。

こういった感覚を持ったほうがよいということです。平均値そのものは数字として存在しますが、その平均値にあたるものは存在しないかもしれません。「平均値にだまされるな」については、いろいろな方がさまざまな角度から解説しています。しかし私は、このテーマは「存在しない可能性があるものをあるかのように論じるのは危険だから」のひと言で終わるシンプルな話だと思っています。

平均値は“視覚化”すれば騙されることはない

では、どうすれば平均値にだまされずに済むのでしょう。その答えは先ほどの事例ですでに示しています。きわめてシンプル。視覚化すればいいのです。先ほどの例を思い出しましょう。

ある会社の平均年齢が40歳という情報があったとき、その情報だけで物事を決めつけず、具体的な数字を確かめ、それをグラフにすれば、どの年齢が存在しどの年齢が存在しないか、すべて明らかになります。すべて明らかになるのですから、だまされることは100%ありません。

平均値というたったひとつの数字で判断しようとするからだまされてしまいます。しかしこれは、すべてを明らかにするだけで解決する問題なのです。そうはいっても、現実問題としては、すべてを明らかにすることが難しい場面もたくさんあります。

たとえばメディアで紹介される「平均○○○」といった数字は、その数字だけが紹介され、すべてのデータを見せることはもちろん、分布が明らかになるグラフを見せることもほぼありません。そういう意味で、私は「平均○○○」といった数字だけでは何もわからないし、何も評価できないと考えるようにしています。

それによって、実態を正しく把握することはできなくても、数字にだまされるという悲劇だけは避けられます。裏を返せば、あなたがビジネスシーンにおいて「平均○○○」という数字を使ってコミュニケーションを図るときは、その数字だけではなくデータの分布などがはっきりわかるグラフなども添えてあげることをおすすめします。

「ひょっとしてコイツは平均値を使ってごまかそうとしているのか?」なんて思われたら損ですからね。

・POINT
平均値は存在するけれど、その数字が示すものの存在は疑う