「うちの商品は顧客満足度90%なんです」。そういって売り込む営業マンに対しては、どう応じればいいか。ビジネス数学教育家の深沢真太郎さんは「『その満足度という数字の定義を教えてください』と質問してみてほしい。定義がわからなければ、その数字は評価できない」という――。(第1回)

※本稿は、深沢真太郎『数字にだまされない本』(日経ビジネス人文庫)の一部を再編集したものです。

商談
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

数字にだまされないためにはどうしたらいいか

ここから私たちが数字にだまされる事例をたくさん紹介していきますが、その前に「数字にだまされる」「数字にごまかされる」ことについて簡単に整理してみましょう。

そもそも、数字とはなんでしょう。きわめてシンプルな問いですが、意外と人によって答えが違うものです。「数えた結果」とか「非常に客観的なもの」といった答えが一般的でしょうか。私は、数字とは「コトバ」であると定義しています。ここでの「コトバ」とは、皆さんが認識している、コミュニケーションでごく普通に使われる言葉のことです。

たとえば、経済指標やビジネスに関するデータはまさにコトバで、それは発した側と受け取る側とのコミュニケーションを生んでいると考えることができます。発した側と受け取る側をAとBと表記して話を進めます。

A コトバを発した側(数字を見せる側)
B コトバを受け取る側(数字を読む側)

Aには「だまそうとしている」と「だまそうとしていない」の2種類があると考えられます。作為的な数字を使い相手のミスリードを期待するのが前者であり、そんなつもりはまったくないのが後者です。一方、Bはその数字を見ることで「だまされない」と「だまされる」という2種類の結果に分かれます。これを2×2の表で表現すると、2つのパターンがあることがわかります。

【図表1】数字を見せる側と読む側の関係
数字を見せる側と読む側の関係(出所=『数字にだまされない本』)

ここで重要なのは、Bがある数字を読もうとするとき、相手のAがだまそうとしているのかしていないのかはわからないということです。だからどちらにせよBは「だまされる」→「だまされない」になればよいということになります。大事なのは、あなたがその数字の意味を正しく読み取ること。それだけです。相手がだまそうとしているかどうかは問題ではなく、あなたがその数字にだまされないかどうかが問題なのです。