「アピールしやすい表現」を選んでいる可能性を考えたほうがいい

とても簡単な問題に見えますが、私がこれまで経験した限り、実はビジネスパーソンからの回答として2種類あります。

回答1 10%→20%となったので20人
回答2 もともと効果を実感していたのが10人であり、その10%増加だから11人
深沢真太郎『数字にだまされない本』(日経ビジネス人文庫)
深沢真太郎『数字にだまされない本』(日経ビジネス人文庫)

回答1は10%増えたという表現を「10%から20%に増えた」と解釈した場合、つまり10人増えたという理解です。確かに、10%増えたという意味では、こう解釈するのも間違いとは言い切れません。一方の回答2はサプリAに効果ありと答えた10人を基準にし、その10%が増えたと解釈した場合、つまり増えた人数はひとりという理解です。この解釈も間違いとは言い切れません。

ここで申し上げたいのは、このようにひとつの数字に複数の解釈が生じてしまうケースでこそ、まさに「だまされる」が起こるということです。サプリBの効果をアピールしたい側になって考えてみましょう。

実際はひとりしか増えなかったとして、「ひとり増えました!」ではアピールにならないと考えるのは自然なことです。サプリBの効果をできるだけ魅力的に表現したいとするなら、「10%増えました!」という表現を選択するかもしれません。

「効果が2倍」という表現が作り出された過程を読み解く

一方で、プレゼンテーションを見聞きする側が回答1の解釈をしてしまったら、実際はひとりしか増えていないにもかかわらず、10人も増えたと認識します。正しいけれど誤り、まさに数字にだまされた状態です。「効果が2倍になりました!」といった表現もこれに近いものです。直感的に「それはすごい!」と思いがちですが、割合(%)の原理と同じように読み解く必要があります。

どのような人に調査したのか
偏りを疑う必要はあるか
何人のうち何人が「効果あり」としたのか
2倍(増加)の定義は何か

このように読み解いていくことで、実はきわめて特殊な人たちに行った作為的な調査において、「効果あり」と答えた人がたったひとりしか増えなかった結果を「効果が2倍」と表現している可能性もあると指摘できるでしょう。