私が白銀比に関心を持ったそもそものきっかけは、中学2年のときに読んだ松尾芭蕉の俳句だ。芭蕉の「奥の細道」には、私の故郷である山形で詠んだ句がたくさんある。その中のひとつ、「閑さや岩にしみ入る蝉の声」は、立石寺に参詣した際に詠んだものだ。また、「雲の峯幾つ崩て月の山」は、私の家の近くにある月山を詠んだ句である。

中学2年生の私はこの2つの句を読んで、えも言われぬ感動を覚えた。立石寺も月山も私にとっては見慣れた風景なのに、芭蕉の句を通して見ると、違う印象がわきあがってきたからだ。見たことのない風景を、句を読んで想像させるのであれば理解できるが、見慣れた風景にもかかわらず、どうしてこんなに感動するのか。

それ以来ずっとその疑問を抱き続けてきたのだが、あるとき、その謎が自分なりに解明できたのである。きっかけは、華道の未生流との出合いだ。未生流の華道技法は、花を直角二等辺三角形に形取って生けるのが特徴だ。未生流の開祖である未生斎一甫は、華道に宗教的観念を取り入れ、直角二等辺三角形は「天地人」を表しているとされる。天地人とは、つまり「全宇宙」のことだ。

前回(http://president.jp/articles/-/21775)も触れたように、直角二等辺三角形というのは、半分に折ると、同じ形(相似)の直角二等辺三角形ができる。同様に繰り返して半分に折っていくと、次々に直角二等辺三角形ができる。無限に相似がつくり出されるのだ。

実は、宇宙も相似であるといえる。大きな世界も小さな世界も同じ形でできている。銀河系もDNAもみな渦巻き状になっている。これらを宇宙の相似形という。