「当社の顧客の男女比は7:3です」──。ビジネス現場で当たり前のように使われる「比」だが、改めて「比とは何か」と問われると、戸惑う人もいるはず。比は小学校6年生の算数で習う単元だが、こうした基礎の基礎を意外に理解していないことがある。
たとえば「4」と「5」という数字がある。その割合は「4:5」と表す。このように表された割合のことを「比」という。では、割合とは何か。
割合とはある数が、もう一方の数のどれだけに当たるかを表した数のことで、「○倍」「○%」などと表す。先ほどの「4」と「5」であれば、「4」は「5」の「0.8倍」であり、また「80%」ということになる。このように比と割合は非常に近い関係にある。
「4:5」の場合、「4÷5=4/5」という「比の値」が求められる。また、「4:5」と「8:10」という2つの比があり、比の値はそれぞれ「4/5」と「8/10(=4/5)」である。このように比の値が等しいとき、それらの「比は等しい」(等しい比)という。そして「4:5=8:10」と表すことができる。
そして、この等しい比には、2つの性質がある。「A:B」のとき、AとBに同じ数をかけても、同じ数で割っても、比は等しい。たとえば「3:2」にそれぞれ「5」を掛けると「15:10」になる。「8:12」をそれぞれ「4」で割ると「2:3」で、いずれも比は等しいことがわかる。
この等しい比の性質を使って、できるだけ小さい整数の比になおすことを「比を簡単にする」という。比の両方の数の最大公約数で割れば、比を簡単にすることができる。たとえば、「24:16」の場合、最大公約数の「8」で割ると「3:2」となる。では、図の問題に挑戦していただきたい。ただし、小学算数の範囲の中で解いてほしい。
まず水に濡れた部分を「1」とする。Aを「2/3」にしたものが「1」なのだから、元々のAの長さは「1」を「2」で割って「3」倍すればよい。つまり「3/2」となる。同様にBについて見てみると「6/5」。同じ「1」に対する比率なので、「A:B=3/2:6/5」となる。
次に等しい比の性質を使い、分数の比を簡単な整数にするには分母の最小公倍数をかければよいので、「10」を掛けて「15:12」。さらに整数の比を簡単にするには最大公約数で割ればよいので、3で割って「5:4」。そうすると、Aの長さは「5」、Bの長さは「4」となり、その差の「1」は図を見てわかるように「9cm」である。
Aの長さは「5」なので「9×5=45cm」。また、Aの「2/3」が水に濡れていたので、池の深さは「45×2/3=30cm」と導き出せる。
いかがだろう。ちなみに、これは中学受験向けの算数の問題で、中堅校レベルの難易度だが、けっこう難しく感じる人が多いのではないか。
また「A:B=3/2:6/5」は、水に濡れた部分の「2/3」と「5/6」の逆数になっていることに気づいた人もいることだろう。このような逆数の比を「逆比」ということも知っておきたい。