新商品の企画会議。自信を持って出したアイデアに、上司からいろいろと注文がついた。価格が高い、パッケージが堅苦しい、使い勝手が悪い……、後出しでいろいろ条件が出てくる。そんなことは最初にいってくれよと、毒づきたくもなってくる。

上司がつけた条件とは、数学でいう「必要条件」のことだ。みなさんも「十分条件」とセットで覚えているだろう。

しかし、あらためて必要条件と十分条件とは何かと問われると、どっちがどっちだったっけ? と怪しくなるのではないか。必要条件、十分条件という言葉のわかりにくさもあって、きちんと理解している人は意外に少ない。

必要条件と十分条件は、高校1年の数学「論理と集合」という単元で習う。論理と集合は、大人が数学を学び直すときに一番大事な単元だと私は思っている。これがわからないと、ロジカルな考え方ができないといってもいいくらい重要なものだ。

必要条件と十分条件は、辞書的には、「PならばQが真のとき、Pを十分条件、Qを必要条件という」という説明になる。

これではわかりにくいので、東京都民と千代田区民に置き換えて考えてみよう。そうすると、「東京都民であることは、千代田区民であるための必要条件」「千代田区民であることは、東京都民であるための十分条件」となる。

つまり、ある人が千代田区民であるためには、少なくとも東京都民であることが必要な条件で、反対に、ある人が東京都民であるためには、千代田区民であることは(十二分すぎるほど)十分な条件ということである。

この例のように、「必要条件=ゆるい条件=大きい範囲」「十分条件=厳しい条件=小さい範囲」とイメージすればわかりやすいだろう。そして、この必要条件と十分条件の関係を理解すると、ものごとを論理的に選択することができるようになる。

冒頭の新商品の企画会議の場合、価格設定やパッケージのデザインなどの必要条件を最初にすべて示したうえで、それらを満たすアイデアを出し、そのなかから十分条件に近いものを選ぶというのが効率的な方法だ。要は大きい範囲(必要条件)から小さい範囲(十分条件)へと狭めていくのである。

実は私たちは普段の生活で、無意識にこうした選択をしている。朝、洋服を着るとき。最初に今日は寒いか暑いかを考える。つまり、「必要条件=ゆるい条件=大きい範囲」は、気候に適しているかどうかということだ。そのうえで、TPOに合うもの、仕事ならスーツ、遊びならカジュアルと選んでいく。こうやって十分条件に近づけていくわけだ。

ところが、ビジネスなど大事な場面になると、こうした考え方がなかなかできない。常に意識していないため、身についていないからだ。

何かを選ぶときなどは、紙に書いてもいいし、頭のなかでもよいので、必要条件と十分条件の図を描くようにするとよい。それを心がけていると次第に習慣化して、論理的思考が身についてくるはずだ。

(構成=田之上 信)
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