つるかめ算は頭の体操

「つるかめ算」をご存じだろうか。聞いたことはあっても、具体的には知らない人もいるのではないか。

「鶴と亀の頭の数が合わせて10ある。足の数の合計は30本。このとき、鶴は何羽、亀は何匹か?」というように、ある2つ以上の異なる種類のものがあり、その総数がわかっている場合に、それぞれがいくつあるかを考える問題だ。このつるかめ算、小学校の教科書では、ほとんど触れられていないものの、中学受験では必須の「特殊算」と呼ばれる算数の解法の1つでもある。

たとえば、「100円玉と500円玉が合わせて19枚あり、その合計金額は5100円。このときに500円玉は何枚あるか?」という問題。これは中学数学の「x」を用いた1次方程式で簡単に解けるのだが、中学受験では方程式ではなく、特殊算で解くことが求められる。読者の方も頭の体操だと思ってチャレンジしてみてほしい。

つるかめ算は、塾では「面積図」を使って解く方法を教えるのが一般的だ。図のような面積図で考える。四角形CDEHは、タテが100円玉1枚分(100円)、ヨコは100円玉と500円玉の合計枚数(19枚)を表している。一方、四角形AGEFは、タテが500円玉1枚分(500円)、ヨコが500円玉の枚数を意味する。そして、図全体(ABCDEF)の面積が、合計金額の5100である。

まず、四角形CDEHの面積を計算すると、「100×19=1900」となる。次にもう1つの四角形ABHFの面積を求める。これは全体の面積から四角形CDEHの面積を引けばよいので、「5100-1900=3200」となる。つまり、四角形ABHFの面積は3200である。さらに、ABの長さは「500-100=400」なので、AFの長さ(500円玉の枚数)は「3200÷400=8(枚)」となり、答えが求められる。

つるかめ算について、ノーベル物理学賞を受賞した湯川秀樹博士は、自身の中学生の頃を振り返って次のように記している。「代数も好きであった。小学校の算術に、ツルカメ算などというのがある。まるで手品のような巧妙な工夫をしないと、答えが出ない問題だ。それが代数では、答えを未知数エックスと書くことによって、苦もなく解ける。論理のすじ道を真直ぐにたどって行けばよい」(湯川秀樹著『旅人』角川学芸出版)。