「面白さ」ばかりでは、他の重大ニュースを見落とす
不謹慎ではあるものの、メディアはこうした「面白すぎる人物」「特徴があり過ぎる人物」を、事の重大性はさておき、いつまでも取り上げることとなる。対して、黒いスーツを着た白髪のオッサンやメガネの地味なオッサンが4人並ぶ「ミズノ『飛び過ぎる統一球』謝罪会見」が2014年に発生したが、このシーンをいまでも鮮明に覚えているのは相当な野球マニアくらいだろう。登場人物の印象が薄ければ、世間の記憶はすぐに風化してしまうものだ。
その一方「キラキラ広報」という言葉もある。これは、美人の若い広報担当者が記者の質問に答えた場合に「美人過ぎる広報」「美人過ぎるOL」などと書かれ、ネットで評判になることだ。こうした人物は、ポジティブな話題の際にスポークスマンになるべきである。
というわけで、スポークスマンは「いいことを発表する人」と「謝罪対応要員」と明確に分けておくほうがいいかもしれない。何しろ、マスコミの追及の激しさの基準となる要素が、単なる「キャラの特異性」に収斂してしまうような状況にあるのが、いまの日本なのだから。
あとは被害者と加害者が誠実に協議をすれば、ひとまず落着か……という段階にある案件であっても、「面白い」というだけでマスコミが過度な報道を繰り返す。そんな状況は、読者・視聴者がもっと関心を払わねばならない他の重大ニュースに向き合うための時間を削いでしまう。これは、大きな機会損失だ。
・不祥事のスポークスマンは地味でつまらない人物に限る。
・面白さばかりに注目していると、大事なニュースを見落とすぞ!
1973年東京都生まれ。ネットニュース編集者/PRプランナー。1997年一橋大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ではCC局(現PR戦略局)に配属され、企業のPR業務に携わる。2001年に退社後、雑誌ライター、「TVブロス」編集者などを経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『バカざんまい』など多数。