「面白すぎるキャラ」は不祥事を長引かせる
こうした「面白すぎるキャラ」の筆頭格に挙げられるのは、2007年から2008年にかけて食材偽装や食べ残し料理の使いまわしが発覚し、廃業へと追い込まれた「船場吉兆」の謝罪会見だろう。取締役の湯木喜久郎氏に報道陣から厳しい質問が次々と寄せられるなか、横に座った母親の湯木佐知子氏が「頭が真っ白になって……(と言いなさい)」と喜久郎氏に小声で指示。そのさまが「腹話術会見」などと評された。佐知子氏には「ささやき女将」のあだ名までついてしまった。
このとき、世間に注目されたのが過度に緊張した喜久郎氏だけであれば「情けないボンボン取締役が涙目で冷や汗」といった程度の印象で終わったのだろうが、あまりにも佐知子氏のキャラクターが面白すぎた。日本料理の名門「吉兆」ブランドの知名度が醜聞の拡散に影響した面もあるだろうが、正直、高級店にあまり縁がない一般の人々からすれば「あるセコい店の悪事がバレた」程度のこと。あれから10年も経とうとするのに、こうしてリスクマネジメントの失敗例として取沙汰されることはなかっただろう。庶民が行く巨大チェーンが組織ぐるみで何百万食もの食品偽装をしていた、というわけではないのだから。
籠池氏も、ささやき女将もそうなのだが、マスコミが追うイシューは事件の重大性という要素に加え、「登場人物の面白さ」というものも大いに影響するのだ。ほかにも過度に報じられた例として、私が一瞬にして思い出すのが以下の件である。もちろん被害者本人にとっては重大ではあるものの、マスコミ報道の量として「多過ぎるのでは?」と思われるものである。
●耐震偽装問題におけるヒューザー・小嶋進氏。「ホリエモンになぞらえまして、私は小嶋でございますけど『オジャマモン』ということで、ぜひスタジオに呼んでください」「私の顔が悪人の顔に見えますか!」などと発言したり、演歌歌手デビューしていたりする点などが特徴的。
●殺人ユッケ事件におけるフーズ・フォーラス勘坂康弘氏。ムダにイケメンで、役者顔負けともいえそうな土下座を大袈裟に行った点から印象に残り過ぎた。
●異物混入騒動における日本マクドナルド、サラ・カサノヴァ氏。仏頂面で会見に臨み、マクドナルドが被害者であると言い張り、一気に評判が悪くなった。深々とお辞儀をしなかった点も反感を買った。
●政務活動費の不正受給疑惑における「号泣議員」こと兵庫県議の野々村竜太郎氏。書き起こしサイト・ログミーが記したこのセリフが大きなインパクトを残した。
「この世の中を! ウグッブーン!! ゴノ、ゴノ世のブッヒィフエエエーーーーンン!! ヒィェーーッフウ゛ンン!! ウゥ……ウゥ……。ア゛ーーーーーア゛ッアーー!!!! ゴノ! 世の! 中ガッハッハアン!! ア゛ーー世の中を! ゥ変エダイ! その一心でええ!! ィヒーフーッハゥ。一生懸命訴えて、西宮市に、縁もゆかりもない西宮ッヘエ市民の皆さまに、選出されて! やっと! 議員に!! なったんですううー!!!」