ムッシュかまやつさんの訃報を聞いて、テレビは高齢者向けメディアだと痛感した。人の訃報から分かったマスメディアの位置づけとは。

「ムッシュ」を知らない若者とテレビの特性

かまやつひろしさんが78歳で亡くなった。テレビが追悼の企画を放送し、故人と関係の深かった芸能人からコメントを取っている。私もムッシュかまやつが亡くなって悲しい。それは、同氏が40代で積極的にテレビに出ていた頃から見ていたからである。しかし、ザ・スパイダースというバンドで歌っていた頃の話はよく分からない。

今回の件で改めて思ったのが、テレビが高年齢層に向けたメディアであるということだ。今回、20代の若者とこの話をすると「かまやつひろしって誰ですか?」と聞かれた。

「『チューボーですよ!』に出演していたマチャアキこと堺正章と一緒に『ザ・スパイダース』というバンドを組んでいた人ですよ」
「えっ、番組でタンバリンをマチャアキと一緒に叩いていた人?」
「いや、それは井上順」
「かまやつさんって、すごい人だったんですか?」
「すごいも何も、アイドルの先駆けみたいな感じで、日本の音楽シーンをつくった一人でもあると思いますよ」

若者と、こんな会話をした。そういえば彼は、元力士の龍虎(りゅうこ)さんが亡くなったときも「龍子(りゅうこ)っていう女優ですか? それとも芸人?」と尋ねてきたほどである。これを無知だと言ってはいけない。自分もかつてはそうだった。

さすがに43歳になった今、情報番組で長時間の尺を用意するような著名人の訃報に触れて「この人、知らない」となることはないが、10代~30代前半の頃は往年の俳優やスポーツ選手が90歳で亡くなったといった報道を見ても、誰だか分からなかった。そして、「なんでこんな知らない爺さん(婆さん)について、延々と眉間に皺寄せて悲しむ演技を出演者のこいつらはしているんだよ」などと思っていた。