「働き方改革」を本当に実現したいのであれば、「お客様は神様」的な過剰サービスを基本にせず、顧客は寛容の精神を持たなければならない。

サービスは75~78点くらいで満足すべし

2017年3月28日、参議院議員会館にて「働き方改革に物申す院内集会」が行われ、そこに私も登壇した。他の登壇者は千葉商科大学国際教養学部専任講師・常見陽平氏、教育系ジャーナリストのおおたとしまさ氏、フリーライターの赤木智弘氏だ。タイミングとしては、常見氏が『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社)を、私が『電通と博報堂は何をしているのか』(星海社)を、それぞれ上梓した時期となる。

常見氏は「働き方改革」という政府の掛け声がいかに空虚なものであるかを説明し、おおた氏は生産性の高め方や世の不平等について語り、赤木氏は「働き方改革」自体が正規雇用向けのもので非正規をないがしろにしているものだと指摘した。私はといえば、電通と博報堂を中心とした広告業界の残業時間が長くなる背景と、下請け企業の長時間労働も問題視すべきであるといった趣旨の話をした。

全体の総括の中で「どうすれば日本の働き方に関する諸問題は解決するか?」と聞かれ、私は「基本的に100点満点を求めず75点~78点で満足せよ」といった話をするとともに、「お客様は神様です」的思想を捨て去れと提言した。

そんな話をしながら、急遽頭に浮かんだのが「中国人居酒屋店員を参考にせよ」という意見であり、壇上でも先の点数の話題に続けて言及した。

ここで改めて、この発言の意味を解説しよう。私が東京・渋谷で頻繁に出入りする居酒屋は3軒あるのだが、このうちの2店は店員がほぼ全員、中国人である。みな日本語が堪能で、注文を間違えたりすることもなく、テキパキと仕事をするのだが、いわゆる「日本的おもてなし」の感覚はない。

「ノミモノ、ナニ?」「リョウシュウショ、イル?」「ハイ、ヒヤヤッコ」といった話し方をし、客の前で賄いをかっこんだり、数人で空いている席に座って中国語でだべったりもしている。スマホを覗き込むこともしばしばだ。

恐らく上記のような対応をする日本人店員がいたら、店長を呼びつけ、「なんであんなにダレた店員がいるのだ! ちゃんとした敬語を話させ、賄いはバックヤードで食べさせなさい! 客のいる前で無駄話に興じるとは何事ですか!」なんて怒ってしまう客もいるかもしれない。