避けるべきは日本的習慣の押しつけ
ところで、なぜ「社外」より「社内」のほうが、トラブルに陥りやすいのでしょうか? その大きな原因として、国を越えると働くスタイルがまったく違うこともあり、互いに拒否反応を起こしてしまうという点が挙げられます。
「社外」とのコミュニケーションは、「社内」ほど感情が絡むことはありません。というのも、例外はまれにありますが、「社外」は一歩引いたドライな対話が中心であり、取引の条件など客観的な内容が重視されるからです。相手が自分の希望通りにしてくれなかったと腹を立てたとしても、あくまでもビジネス上のことであり私的感情が入ったトラブルに陥りません。
一方、「社内」というのは同じ職場で働く仲間になるため、頼んだり頼まれたりしながら仕事を進めていかなければなりません。そして、仲間であるからこそ同じ働き方を求めてしまいます。当然、そこから「何となくその働き方が気に入らない」という私的感情も湧いてくるのです。これは「社外」との対話とはまったく異なります。さらに、国が変われば、働くスタイルも変わってくる。すると、ちょっとしたすれ違いが拒否反応を起こし、最悪の場合には重大なトラブルに繋がってしまうのです。
このような「社内」トラブルは日本人同士でも多いわけで、これをグローバルベースで考えるならばコミュニケーションには更に注意が必要になってきます。英語という世界共通言語をマスターすれば誰にでも想いは通じるなどという、そんな簡単な話ではないのです。
つまり、グローバル環境で「社内」トラブルが発生する原因の大多数は、海外の文化を理解しないまま、自分の国の慣行を押し付けた発言をしてしまうことにあります。日本のケースで考えると、「相手に反省をすぐ求める」というのがその典型でしょう。例えば以下のような発言をアメリカ人にしたとしましょう。
Why did you make same mistakes?(なぜ同じミスをするんだ?)
責任を追及されることを嫌がるアメリカ人は、こういった攻撃的な表現に強烈な拒否反応を示します。その程度で怒るなんてまるで子どもじゃないか、と思ったあなたはアメリカ人の文化を理解せずに表面上の英語だけを学習したにすぎません。