「商談を統合する」とは?
商談の統合化とは、たとえば、地域ごとに仕入れを行っていたチェーンストアが、本部商談による全国一括仕入れに切り替える、あるいは、工場や営業所ごとに情報機器やソフトウェアを購入していたメーカーが、本社の情報システム部門による集中購買に切り替えるといった動きである。この商談の統合化の動きを後押ししていたのが、ITの進化であり、コンピュータをはじめとする企業内の各種の情報機器が、回線でつながるひとつのシステムとなっていくなかで、商談を統合化することの有効性と必要性が増していた。
商談の統合化は、販売側の企業にも変化を迫ることになった。そこで営業に必要とされたのは、たとえば、取引先の年間の販売見込みを個店ベースで把握して、全国の配架計画を一括提案する、あるいは各地の工場や営業所ごとの機器の稼働状況を把握して、効率的なバージョンアップにつながる全体配置計画を提案するといった対応である。しかしこうした対応を、営業マンが個人で実行することは難しい。そこで出番となったのが、プロセス管理とチーム営業を組み合わせる営業2.0だった。販売側においても、ITが進化し、データベースの使い勝手が増していたことが、営業2.0を推進する追い風となった。
ITの進化は、企業の購買活動の変化、さらには、これに対応しようとする営業のスタイルに変化を導く。この絶えざる変化の動きは現在もとまらない。
そのひとつが、2010年代に入り、広がりをみせているクラウドサービスの利用である。近年では、いつでもどこでもインターネットへのアクセスが可能な環境が整う。クラウドサービスとは、このウェブを介したレンタル型のITの利用サービスである。一般消費者の音楽の聴き方が、CDの購入からウェブ経由の定額聞き放題サービスに移行しているのと同様の動きといえる。
クラウドサービスを利用する企業は、必要な業務用情報システムなどを、自社が所有するサーバー内に構築するのではなく、ウェブ経由でクラウドサービス企業のサーバーにアクセスしながら利用する。クラウドサービスであれば、企業は、導入時に大きなコストを投じる必要はなく、月々の使用料を支払うかたちで、業務用情報システムの利用をすぐに開始できる。
プロモーションなどにおいても、インターネットの利用は広がっている。ウェブ上で展開されるターゲティング広告などでは、配信するエリアや対象者を絞ることが容易である。そのために個店単位で、当日に特売情報を発信するといった、柔軟な配信も可能になっている。
こうしたクラウドサービスやターゲティング広告の特徴は、シェアリングを通じて、必要なときに必要な分だけを効率的に利用できることにある。これらのサービスや広告を利用する企業は、サーバーや基幹システムへの大きな投資が必要となるわけではない。あるいは、スケールメリットを引き出すために、チラシの印刷や配荷先について本部で個店情報を収集し、販売計画に沿って掲載内容を調整しておく必要もない。企業の個別の部門、あるいは店舗などの小ユニットの裁量での柔軟な購買が可能になる。