「営業1.0」個別にノルマ達成度を競わせる
マーケティングのデジタル化が進めば、営業も変わる。日本において、チーム営業を重視した営業改革が活発に行われたのは、そう遠い昔ではない。その背景にはITの進化があった。しかし、デジタル環境の発展は、さらにこのチーム営業のあり方を揺さぶるようになっている。
時代を追って見てゆこう。20世紀後半の日本経済の成長期、日本企業のマーケティングを支えていた営業のスタイルを、ここでは「営業1.0」と呼ぶことにする。上司に厳しく叱られながら、一人前の営業マンに成長していく。そんな働き方が当たり前だった時代の営業である。営業先の店舗の掃除を手伝うといった話もめずらしくなかった時代だ。
営業1.0は、営業マン個人の働きに依存した、属人的な営業だった。当時は大企業であっても、営業マン個人による取引先との属人的な信頼関係を軸に、ビジネスが進むことは珍しくなかった。
スマホやモバイルPCはおろか、携帯電話も普及していない時代である。営業の猛者たちの社外での行動プロセスは把握しにくく、工場やオフィスの業務のようには管理できなかった。そこで営業マンの評価については、プロセスではなく結果、すなわち、ひとり一人に課せられたノルマ(多くは、売上げ予算)の達成度合いを競わせるのが、通常だった。
この渦中で営業マンたちは、自らに課された数字目標をどれだけ上回るかを競い合っていた。これが元気な会社の姿であり、営業マンたちは、取引先に繰り返し通い、関係を深めていくなかで、ノルマを達成していった。日本経済の全体が年々成長を続けていた時代の話である。そこでは、このような営業のスタイルで、多くの企業が売上げを拡大していた。
日本経済の成長期は、1990年代に入り終焉を迎える。これを受けて、2000年前後の時期になると、多くの企業が営業1.0の見直しを進めるようになる。