「営業2.0」プロセス管理とチーム営業

この時期の日本では、多くの産業で国内需要の拡大が難しくなり、競争が激化していた。そのなかで、売上げを増やそうとして、企業は次々と新製品や新サービスを投入していた。一人の営業マンが扱う製品やサービスの数が増えるととともに、その一つひとつは高度で複雑なものとなっていく。同時に取引先の要求も厳しくなり、単に個々の製品やサービスを売り込むのではなく、サポート・サービスやコンサルティングなどを含めた、総合的でシステム化された提案を行うことが必要となっていった。

これらの課題にこたえるには、営業マン個人の対応だけでは限界があった。そのなかで、多くの企業が営業改革へと向い、「営業2.0」が確立していった。

ここでの改革のひとつの特徴は、プロセス管理である(石井淳蔵『営業が変わる』岩波アクティブ新書、2004年)。新製品や新サービスの告知から保守サービスにいたる営業のプロセスの進め方を、すべて営業マンまかせにしてしまうのではなく、たとえば図1のような標準的なステップを定め、全社的にすべての営業活動をこの標準に沿って進めるようにする。そして、個々の案件のステップごとの成果を評価する指標を用意し、データベース化すれば、営業の進捗状況は社内の誰の目にも明らかになる。ステップごとに担当者や担当部門を分け、ひとつの案件を引き継ぎながら進めていくことも可能になる。これが、営業のプロセス管理である。

図1 営業のプロセス

プロセス管理の導入が進めば、営業のひとつの案件を複数のスタッフで分担して、チームで対応することが容易になる。チーム営業は、営業2.0のもうひとつの重要な特徴であり、たとえば、取引先との窓口となる営業マンが、適切なタイミングで、ダイレクトメール(DM)部門、ソリューション立案部門、システムインテグレーション部門、あるいは保守サービス部門などの専門スタッフと連携し、チームで対応していくことができれば、複雑で総合的な提案を、より高度に行うことが可能になる。

営業2.0への移行は、営業案件の複雑化と高度化、そしてシステム化に対応するものだった。ここで営業を受ける側の企業に目を転じれば、同じ時期に購買活動に重要な変化が生じていた。国内需要が伸び悩むなかで、これらの企業の課題は売り上げの拡大から、収益性の向上に転じていく。そのなかで、購買活動の軸となる「商談」の統合化が進められていったのである。