現役にも、逆境から這い上がってきた経営者は少なくない。アイリスオーヤマの大山健太郎社長もそのひとりだ。大山氏にとって最大の逆境は、73年の第一次オイルショック。10年かけて蓄えた会社の資産はあっという間に底を尽き、たちまち会社は危機に瀕する。工場の閉鎖や社員の解雇でなんとか倒産だけは免れたが、それは大山氏にとって身を切られるようなつらい経験だった。のちにそのときの決断を取材で聞かれて、こう答えている。
「単に売れればいいなら、100円を90円にすればいい。でもそんなことをやっていても未来はありません。会社の目的は、永遠に存続することです。そのためには常に新たな需要を創造しいくしかない。その力がある商品かどうかを私は見ているのです」
どんな時代でも利益を出し続けるにはどうしたらいいのか。そこで大山氏はそれまでの「ただいいものをつくる」ことから、「マーケットを発見しニーズに応える」経営に発想を転換した。
これがなければ、後にデフレ不況で多くの企業が苦しむなか、悠々と黒字経営を続けるというアイリスオーヤマの快進撃はなかったに違いない。