どんな逆境においても諦めず新しい可能性を信じて突き進む。その瞬間、何を思い、突き進むのか。意気消沈する社員を励まし、進むべき方向を示してきた真のリーダーたちの名言とその決意を追う。

困難な交渉を一言で勝ちとる

どんな優良企業であっても、順風満帆の状態が永遠に続くということはありえない。景気が悪化し売り上げが低迷する、ライバル企業にシェアを奪われる、社員の不祥事が公になって信用が失墜……。ひとたびそういった事態に見舞われれば、たちまちその会社は危機に瀕する。経営者の真価が問われるのは、そんなときだ。どんな逆境におかれても、決して冷静さと希望を失わず、意気消沈する社員のやる気を鼓舞し、進むべき方向を指し示す言葉を発することができるのが、真のリーダーだといっていいだろう。

交渉に強いというのは経営者の重要な条件のひとつだ。経営の神様と呼ばれた松下電器産業(現パナソニック)創業者、松下幸之助氏は、タフ・ネゴシエーターでもあった。オランダの総合家電メーカー・フィリップスとの合弁会社を設立するにあたり、フィリップス側は初期契約料55万ドルに加え、技術援助料として売り上げの7%を要求してきた。これに対し松下氏は、すぐさまこう切り返す。

松下幸之助氏●パナソニック(旧松下電器産業)創業者

「初期契約料は仕方がないが、技術援助料は納得できない。どうしてもと言うのなら、経営の責任は松下なのだから、こちらは経営指導料を要求する」

フィリップス側は、そんなことは聞いたこともないと突っぱねたが、松下氏も一歩も引かない。交渉は1年にも及び、最後はフィリップスに技術援助料4.5%を支払う代わりに、松下電器は経営指導料3%を受け取るという契約で落着した。1952年の話である。相手の技術援助料に対し、経営指導料をぶつける機転。さらに、当時の松下電器よりはるかに格上のフィリップスに対し、臆することなく堂々とわたり合った。