自分の言葉で素直に書く

しかし手紙を書くとき、どういう書き方をすれば相手の心を動かせるか、というようなことはまず考えない。心がけているのは、本のどこに感銘を受けたか、会ってどんな話を聞きたいか、それから自分はどういう人間で、どんなことに問題意識を持っているかといったことを、自分の言葉で素直に書くということだ。丁寧な字で、誤字脱字がないというのは当たり前だが、正式な書式や時候の挨拶などは気にしたことがない。筆記具も高価な万年筆などは使わず、便箋にボールペンだ。

とくに若い人は、手紙はハードルが高いと敬遠しがちだが、大事なのは形ではなくあくまで中身。私のところにもときどき、拙著を読んだ若い人から会いたいという手紙が届くが、その理由がきちんと書いてあり、さらに文面から真剣さが伝わってくれば、じゃあ食事でもしようかという気持ちになる。

相手が現役世代の人なら、ペンをとるのではなく、メールやフェイスブックへのメッセージでもいいだろう。だが、70歳以上の方に何かを伝えようというときは、そういうものより手紙のほうが向いている。しかもその年代の人たちは、貴重な情報を山のように持っているし、それを後進に伝えたいと考えている人も少なくない。手紙を書くといっても必要な時間はせいぜい20分。それで未来が開ける話が聞けるかもしれないのだから、躊躇などせずどんどん書けばいいのである。

テラモーターズ社長 徳重徹
1970年、山口県生まれ。九州大学工学部を卒業後、大手損保に入社するも29歳で退職。米国への留学、シリコンバレーでのベンチャー支援事業を経て2010年、テラモーターズを創業。アジアを舞台に奮闘中。
(山口雅之=構成 的野弘路=撮影)
関連記事
手紙でもメールでも、いちばん大事にしていること
『世界へ挑め!』徳重 徹
勇気をもらえる「吉田松陰の言葉」
一目置かれる「お手紙グッズ」10選
芥川賞作家・羽田圭介の「デジタルメモ術」拝見