手書きのほうが向いているのは
パソコンやスマートフォンの時代に、わざわざペンや紙といったローテクな筆記具を使う必要はない。そういう意見もあるかもしれないが、私は違うと思う。少なくとも次の2つの目的に関しては、手書きのほうが適している。
1つ目は、日常のメモ。私のようなベンチャー経営者には、毎日やることが山のようにある。とくに、当社が手掛けている電気バイクはアジアが主要市場なので、本社にいるより海外を飛び回っている時間のほうがはるかに長い。移動中も頭はフル回転しており、さまざまな業務の確認事項や、仕事のアイデアなどが浮かんでくる。しかし、あとでパソコンで整理しようなどと悠長なことをいっていたら、ホテルに着くころには忘れてしまう。思いついたらすぐに記録することが大切だ。それにはデジタルデバイスより、手書きのほうが断然早いし使い勝手がいい。
いつも持ち歩いている財布の表に、7センチ角の付箋を貼っておき、何か思いついたら瞬時にそこにメモするようにしている。これなら駅でも空港でもすぐに取り出してサッと書けるし、保管もあとでコピー用紙にそのまま貼るだけだ。メモを貼り付けた用紙は処理が済んだ項目から塗りつぶしていき、黒くなったらその部分だけ切り取って全体をコピーする。それでできた新しい用紙には、切り取った分だけ書き込み可能な余白ができるというわけだ。
(左)気づいたことを書きつけたり付箋を貼ったりするメモ用紙。解決済み項目は塗りつぶす。黒くなった部分はハサミで切り取り、全体をコピーして余白を増やす。(右)とっさのメモ用に、7cm角の付箋をつねに財布に貼り付けておく。
この手書きメモの効能は、忘れるのを防ぐだけではない。むしろ、「安心して忘れられる」効果のほうが大きい。パソコンのメモリーと一緒で、人間の脳も記憶に使っている領域が増えると、パフォーマンスが落ちる。柔軟で軽やかな思考ができるようにするには、どんどん情報をアウトプットして、脳をいつもクリアな状態にしておくことが重要なのだ。