グーグル社員も実践する取り組み
一方、「人生100年の時代に到達しつつあります。これまでは“長時間”働くことがビジネスパーソンとしての価値でしたが、今後は“長期間”働くことが重要」と語るのは、予防医学研究者の石川善樹氏だ。
残業で体が消耗しても、それが報酬や肩書という形で報われ、60~65歳の定年以降はゆっくり休める。それが「長時間」スタイルの働き方だった。しかし、寿命は好むと好まざるとにかかわらず年々延び、定年延長は進む。となると、75歳ぐらいまで働くような「長期間」スタイルが求められるようになる。そのためには、自分の限界を知ること。日々の体調に気を配り、小さな不調でも見つかれば、どうすれば回復できるかをその都度考えていくことが必要になる。最近、外資系ほか先進的な企業の間では、社員にハイパフォーマンスを発揮してもらえるよう、ある取り組みを始めている。
「瞑想などによって雑念を捨て、自己の内面を静かに観察し『今ここ』に集中することを“マインドフルネス”と言います。グーグルでは社員のストレスを軽減し、生産性やクリエーティビティを高めるために社員向けのマインドフルネスプログラムを開発しました。世界1位のプロテニス選手ジョコビッチ氏も瞑想が日課で、自分の中のネガティブな感情にとらわれず、本当に大切にしているものに集中できるようになった、と自著で語っています」(石川氏)
いわば次世代のメンタルトレーニングである「マインドフルネス」のスキルを習得することによって、心身の気づきを多く得られるという石川氏と、心の中のトラブルやストレスにもフォーカスを当て、復元力強化を図る新見氏の考え方は、通じるものがある。
1959年生まれ。慶應義塾大学医学部卒業後、オックスフォード大学大学院に留学、98年博士課程修了。2002年より現職。医学博士。漢方も使える臨床医、移植免疫の研究者でもあり、13年イグ ノーベル賞受賞。著書に『3秒でわかる漢方ルール』『長生きしたけりゃデブがいい』ほか多数。
1981年生まれ。東京大学医学部を経て、ハーバード大学大学院修了。企業・組織の健康づくり調査・研究などを行うCampus for Hおよび、がん検診の受診率をあげる、キャンサースキャンの共同創業者。近著に『疲れない脳をつくる生活習慣―働く人のためのマインドフルネス講座。