周りに比べ、自分は仕事の効率が悪いようだ。一緒に飲んだ翌日、自分は遅刻したのに、同僚は朝早くから仕事をしていた――。日々の何気ない習慣を改めるだけで、そんな悩みも解消するかもしれない。

治りにくい人と治る人との差は?

心臓移植後のマウスは免疫を抑制しないと平均7日で心臓が止まるが、オペラ「椿姫」を聴かせると平均26日、モーツァルトでは20日生存期間が延びた――。

免疫のコントロールを脳が行っていることを証明したこの研究で2013年に「イグ ノーベル賞」医学賞を受賞した研究チームの代表、帝京大学医学部准教授の新見正則氏は、「これからのビジネスパーソンのキーワードとなるのは“レジリエンス”」だと語る。

帝京大学医学部 外科准教授 新見正則氏

レジリエンスとは、心理学や精神医学の分野で以前から使われる言葉で、「復元力」「元に戻る力」を意味する。「嫌なことがあっても、それに耐えたり、受け流したりすることができる力とも言えます」。

新見氏は、心身がいい状態で「いい気持ち」でいると、精神的復元力が高まり、次に身体的復元力も高まるというサイクルがあるという。

「症状も体力も同じなのに、治る患者さんもいれば治りにくい患者さんもいる。昔から病は気から、と言いますが、気持ちの持ち方が健康に影響を与えます。大事なのは、前向きさ。辛いことにぶつかっても『きっと糧になる』と思って受け止める気持ちになれるか。多くの患者さんと接して、睡眠や食事、運動といった日々の生活習慣を定着させることで復元力を高め、免疫力の低下を防ぎ、仕事の質も高めることもあると実感します」(新見氏)