ミニ財布だけでなぜ十分なのか
さて、山口さん自身はどんな財布を持っているのか。バッグのなかから取り出したのは、手のひらに収まりそうなほど小さい、淡いピンク色の財布である。三つ折りの財布を開いて見せてもらったが、ミニサイズのわりにはお札やカードもきちんと入る。
なぜ、こんなに小さい財布を?
「仕事をしていると、バッグに入れておく荷物がどうしても多くなります。モバイル機器にしても傘にしても、それぞれ軽いものや小さいものを選んでいますが、お財布も軽くて小さいほうがいいんです」(山口さん)
それだけではない。できるだけ現金を使わないようにしているため、小銭を入れておくスペースがほとんどなくても構わないのだ。
たとえば、山口さんは買い物をするときデビットカードを愛用している。デビットカードには、メガバンクや地銀など金融機関のキャッシュカードがそのまま使える「Jデビット」(国内約45万カ所での利用可)のほか、インターネットや海外での利用もでき、利用可能場所が2000万~3000万カ所以上に広がる「VISAデビット」などカード会社系のデビットカードがある。山口さんが勧めるのはVISAデビットだ。
「VISAデビットならハワイのATMでは米ドル、韓国のATMではウォンが引き出せます。利用可能な場所も多いので使い勝手がいいんです」
クレジットカードとは違い口座残高までしか使えず、支払いをすればスマートフォンに「ご利用引き落としメール」が届くのもデビットカードの利点である。
「口座残高が上限だと、余計なものを買ってしまいそうな気持ちにブレーキがかかります。また購入メールが届くので、もし落として不正利用されてもわかります」
さらに、デビットカードのメール機能は家計簿の役割も果たすという。
「昭和時代の奥さんは、お店で買い物をしたら、食品や日用品など項目別に分けて家計簿をつけていましたが、購入履歴や金額がメールで受け取れるならそれで十分だと思います」
山口さんが推奨するのはミニ財布だが、2010年12月に発売されてベストセラーとなった単行本に『稼ぐ人はなぜ、長財布を使うのか?』(サンマーク出版)がある。
「将来の年収は財布の値段の200倍」を唱えたこの本がきっかけとなって長財布人気が高まり、百貨店の財布売り場では長財布コーナーが拡大した。こだわり派のビジネスマンには「スーツと靴と財布が三種の神器」といわれるようになったのである。