入社後の研修もユニークだ。「バリアフリーお遍路くらぶ」に参加し、目の不自由な人の介助をしながら4日間、四国霊場88カ所を巡礼する。狙いは、いうまでもなく“気づき”にある。視覚障害がある人には、それを補う独特の感覚があり、それに新人が触れることで、驚きや感動を得る。そのことが、人や物事に対する謙虚な気持ちを育て、配属先での立ち居振る舞いにも生きる。

「お遍路によって、社員は成長します。もちろんそれですぐに車が売れるわけではありません。ただ、成長したあかつきに、車が売れる人材の集団に、徐々になってくるんじゃないかなと考えています」

横田英毅氏
1980年のネッツトヨタ南国設立時に副社長。社長、会長を経て取締役相談役。

一見、車の販売につながらないようなことだが、大事なことは目先の利益ではなく、長期的な視野だ。

カーディーラーなのに、社員に飛び込み営業をさせないというのも、横田氏ならではの大英断だろう。やみくもに車を買いそうな人を探し回るのは非効率的であり、社員にとってもストレスになる。代わりに店頭待機の時間とアフターフォローの訪問回数を増やした。結果、販売台数は同じだったという。

「私は、この仕事を始めるに当たり、業務内容を掴むために飛び込み営業もしてみました。知らない家の呼び鈴を押す。すると、出てきた人は車のセールスと知って不機嫌な顔になります。何度繰り返しても同じ。自分がやりたくない仕事は、社員にもさせてはいけないのです」

いま、同社の採用と教育を担当しているのが、子会社のビスタワークス研究所である。所長の大原光秦氏は、89年にネッツトヨタ南国に入社。リクルート室(現・人材開発室)、人材開発室長などを経て、07年に同研究所をスタートさせた。ここの主たる業務は、採用・人材育成コンサルティングサービスやセミナーの企画・開催などだ。