外国人観光客は日本のどこに魅力を感じているのか。放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんは「完全に作られた観光業の国ではないところだ。だが、最近それが失われつつある」という。脳科学者の中野信子さんとの対談をまとめた『ニッポンの闇』(新潮新書)より、一部を紹介する――。(第3回)
「お下げしてよろしいですか」は親切ではなく迷惑
【デーブ】日本ってだから過剰に親切というか、新幹線のアイスクリーム、有名じゃないですか。
【中野】硬くてね。
【デーブ】必ず、「たいへん硬くなっておりますので、少々お待ちになってからお召し上がりください」って言うんだよね。知ってますよ。何度も食べてますよ。
時刻通り出るのに「たいへんお待たせいたしました」って、待ってないんですよね。別に。飛行機で日帰りで福岡行った時、ボールペン書けなくなったから、いけないんだけど前のポケットに捨ててったの。そしたら帰りの便でCAが「先ほどお忘れになったボールペンでございます」って返してきた。「そこまでやる?」って思った。
【中野】日本はそう、そういう感じ。本当そういう感じ。
【デーブ】でも例えばカレーライスとか食べるでしょ? 明らかに食べ終わってて、ごはんひと粒もないのに「お下げしてよろしいですか」ってもう、いやいや、今から舐めようと思ってますってないじゃないですか。会話してるのに邪魔じゃない。あれが嫌。
【中野】なんか話しててめちゃくちゃ盛り上がってるのに、「こちらシーザーサラダでございます」って、頼んだんだから知ってるよ! ってなる。
【デーブ】見りゃわかるよってね。しゃべってなければまだいいけど、臨機応変さがないよね。
【中野】その辺はちょっと思う。