無意識だから面白かった

【デーブ】薬局の前に、カエルのあれ、何だっけ。

【中野】ケロちゃん。

【デーブ】そうそう、あれ面白いじゃないですか。ああいうのですよ。カーネルおじさんも、ふつういないもん、アメリカに。立ってないんです、KFCの前に。

ケンタッキー・フライドチキンの店頭に置かれた「カーネルおじさん」
写真=時事通信フォト
ケンタッキー・フライドチキンの店頭に置かれた「カーネルおじさん」(2003年9月23日、東京都新宿区)

【中野】そうですか?

【デーブ】でもそれが面白いから、みんな写真撮る。不二家の前にペコちゃん立ってるじゃない。ああいうマスコットだらけとか、蝋細工の料理とか食品のサンプルとか、日本人は当たり前と思ってることがガイジンは面白いわけ。

【中野】ふふふ。面白いなあ。

【デーブ】ところが今は間違いなく、日本人がそういうことを意識するようになってしまったんです。何でそれを僕が警戒するかっていうと、今までの日本が面白かったのは、それを意識しないでやってこられたからなんですよ。

意識してしまうとあれと同じなんです、クールジャパン。クールって言っちゃダメなのよ、自分で。

フランスみたいにずっと観光やってる国はいいんですよ。フロリダのディズニー・ワールドとかね。日本はそうじゃないの。独自に知られないまま、無意識で面白い国だったのに、外に知らせると、あるいは自分で意識するともうおしまいでしょ。

【中野】日本人は自己肯定感低いから、褒められたら必要以上にがんばるとか、図に乗っちゃうっていうのは、正直あったでしょうね。

【デーブ】図に乗るのもダメ。いいの。もう放っておけ、放っておきな、言うなって。自然のまんまがいいんですよ、ありのまま。日本はもうそのままだから面白いんですよ。

滝川クリステルがダメにした

【デーブ】もう滝川クリステルが許せないのは、ニュース番組で斜め45度でニュース読んだとかそういうことじゃなくて、「おもてなし」と言ったから。クリスタルが日本をダメにした。

【中野】クリステルですよ。あと、「おもてなし」と言わせたのは代理店とかじゃないですか。

【デーブ】今もうどんどん増えてるね、小泉純一郎とスティーブ・ジョブズと、今、滝川クリステルが仲間入りしたんだけど、なぜかと言うと、それまでは「おもてなし」という言葉、あんまり使ってませんでした。

【中野】おもてなしとは、裏があるなり。

【デーブ】表がないからね。裏だけだよね。それもあるけど、おもてなしって言葉、それまであんまり使ってなかった。ところが流行語大賞まで取っちゃって、流行っちゃって、サービス業の人が、日本人に対しても外国人観光客に対してもおもてなしがどうのこうのと言うようになった。それ、ダメですよ。人に言うもんじゃない。

【中野】ああ、そういうこと。気持ちですからね。相手が思うものであって、自分が言うものではない。

【デーブ】昔、テレビ東京の豪華旅館の番組があったじゃないですか。それで石川かどっか行ったんですよね、すごい旅館に泊まったんですよ、15階建てとか12階建てとかの大きい旅館。そこのロビーにポスターがあって、旅館の従業員全員が同じ色の着物着て、旅館の前の砂浜でお辞儀してるんですよ、もう100人ぐらい。すごい写真ですよ。

僕にしてみたらもうとんでもない写真。何か『ハンドメイズ・テイル』みたいですよ、何だっけ、日本のタイトル。

【中野】はいはい、私も読みましたよ、『侍女の物語』。

【デーブ】それ。恐ろしいですよね。それはいいんだけど、写ってる皆さんね、当たり前だけど違和感ないの。だって今度ポスター用の写真撮りますから、皆さんいつもの着物着ていただいて、外出て下さいって話でしょ。何も意識してないから素晴らしいんですよ。