顧客から絶賛され、高いリピート率を誇る組織づくりをするためには、どうすればいいのか。人手不足も深刻化する中、顧客と従業員満足を同時に高める秘訣を探った。

顧客満足を高めるマニュアルは……

ホスピタリティ――日本流に表現すれば“おもてなし”である。近年、この要素を自社のサービスやマナーに積極的に取り入れていくことで、顧客満足(CS)を高めようとする企業が増えてきている。

95%を超えるリピート率を誇る東京ディズニーリゾートと、顧客満足12年連続ナンバーワンのトヨタ販売店にはどのようなサービスマニュアルがあるのだろうか。徹底取材した。

CS経営といえば、まず東京ディズニーリゾートを思い浮かべる人は多いに違いない。開業30周年を迎えた2013年の入園者数は過去最高の3129万人を記録したが、14年も人気は衰えず、前期の入園者数も3137万人となった。いうまでもなく、来園時の「来てよかった」という感動がなければ、これだけの数字は上がってこない。

30周年を超えてもなお根強い人気を誇る東京ディズニーリゾート。(写真=時事通信フォト)

そのCS向上の一翼を担っているのが、短期アルバイトも含めて「キャスト」と呼ばれる1万8000人のスタッフたちだ。彼らがゲスト(来園者)に接する姿勢、態度が根強いファンを、もっといえばロイヤルカスタマーをつくっているのだ。

そのもてなしの原動力が、ディズニーの理念「We Create Happiness―ハピネスへの道づくり」にあるとヴィジョナリー・ジャパン社長の鎌田洋氏はいう。オープン前年の1982年、運営会社のオリエンタルランドに入社。90年からはユニバーシティという教育部門で、教育部長代理としてスタッフを指導・育成してきた。

「これひとつしかありません。すごくわかりやすい表現で、要は来てくれた人たちをいい気分にさせようということです。そして、パークを後にするときには、笑顔になって帰ってもらいたい。そうすれば、必ずまた足を運んでくれるでしょう」

例えば、あるキャストが園内に咲いている花の名前を聞かれたとする。

そうしたとき「知りません」と答えることはない。ゲストに「少々お時間をいただけますか?」とことわり、バックステージの仲間に連絡する。すぐにわからなければ「後ほど、ここに戻られた際にお教えします」と伝えるのだ。来園者は忘れてしまうかもしれないが、尋ねられた本人がいなければ、他のキャストが代わって知らせる。