従業員の主体性は高められるのか

社員を大切にするという点では、高知県高知市に本社を置くネッツトヨタ南国も特筆されていい。同社は全国に約300社あるトヨタ車の販売会社にあって、CS12年連続ナンバーワンを誇る。

ネッツトヨタ南国のショールームに行くと、スタッフが入り口の前で出迎えてくれる。そして、すみやかに応接スペースに案内され、飲み物が出る。この間の動きはスマートで間然するところがない。

ネッツトヨタ南国の内観。車が1台もなく、カフェテラスのようだ。(写真=時事通信フォト)

驚くことにこうした日常業務にはマニュアルがないという。個々の社員が自分自身で考え、行動していくなかで、できあがったものだ。そうしたなかで「上司は部下に教えない」「上意下達はしない」という主体性を重んじる社内文化が形成されてきた。なぜマニュアルをつくらず、社員の主体性をとことん重視するのか。80年の設立時に副社長で現在は取締役相談役の横田英毅氏はいう。

「CSをどんどん上げようと思えば、やはりESがなければいけません。会社での満足感は何かといえば、それぞれが持っている可能性を最大限に発揮し、評価されることでしょう。そして、人生でも勝利者になってほしい。会社は、そのために様々な工夫をしていくわけです」

そこで重視しているのが人材採用だ。設立時から、横田氏はリクルートの最前線に立ってきた。CSを創出できるような会社にするには、価値観を共有でき、主体性を持って動けるようになる素質豊かな新入社員獲得が不可欠と考えたからだ。

同社では一人の学生の面接に最低でも5~6回、30時間以上かける。毎回、違った社員が面談し、その学生が一緒に働きたい人物かどうかを見る。200時間にのぼった人もいるというから驚く。

先日行われた会社説明会では、様々なブースを設けた。歴史を語るブース、未来を語るブース、若手社員のブース、中途入社社員のブース、産休中の社員のブース……。会社をすみからすみまで見せる。何を考えているのか、何をやっているのか、どんな先輩がいるのか。それを見て、本当に入社したいかしたくないかを、自分で決めてもらうという。

その結果、現在の社員数は130名を超え、離職者は年に一人いるかいないかだ。価値観を共有し、社員が満足して働いている証左だろう。