マイクロソフトにとって、Windows 10環境をできるだけ広げておくことは死活問題
一方で、「内向き」の理由としては、サポート対象となるOSを絞り込むことで、サポートコストの削減効果を狙う理由がある。
Windows 7の延長サポート期限は2020年1月まで、Windows 8.1の延長サポート期限は、2023年1月までと、いずれもまだまだ先は長い。その間、複数のOSをサポートする体制を維持するよりも、なるべく1つのOSへとサポートリソースを集中した方が、マイクロソフトにとってメリットがあるのは明らかだ。
そして、新たなOSを使う環境に移行することで、PC本体の買い換えを促進し、デバイスの販売増加による市場活性化する狙いもある。とくに日本の場合は、欧米に比べて、PCの買い換えサイクルが長いという傾向がある。欧米のPCの買い換えサイクルは3~4年。だが、日本では7年弱と2倍近い。古いPCが数多く使われているのは、日本市場の特殊性のひとつだ。
日本マイクロソフトでは、「スマホは2年で買い換えるのに、PCは7年。ITの進化を、業務の生産性に生かせていないのが日本の状況。その背景には、PC投資をコストと考えてしまう企業が多いことがあげられる。日本マイクロソフトは、そこに危機感を持っている」とする。Windows 10の新たな機能を活用してもらうことで、それによって、その機能を最大限に生かすことができる最新PCに買い換えてもらおうという目論見があるのだ。
一方、新たなPC環境のなかで、新たな製品やサービスを提供していく環境を早期に創出する狙いがあることも見逃せない。
マイクロソフトでは、iOSやAndroid環境に比べて品揃えが遅れているWindowsアプリの存在感を高め、将来の成長へとつなげる方針を掲げながら、最新のアプリやコンテンツを、Windowsストアを通じて販売する仕組みの構築を急いでいる。これは、まさにアップルが「AppStore」で、グーグルが「Google Play」で成功しているのと同じビジネスモデル。これを実現するには、最新のWindows 10の環境を広げておくことが前提となる。新たなOS環境へのシフトは、今後のマイクロソフトのビジネス基盤を作る上で重要なものとなるのだ。