高橋さんが重要視するのが、普段考えることなく初期設定されているものを使いがちな「フォント」だ。膨大な種類があるフォントの中で、おさえておきたいのは、明朝体とゴシック体の2つである。
高級感があり、細い明朝体は、文字数が多い報告書でも誌面が黒々しくならないため、“読ませる資料”に適している。一方、プレゼンなどでスクリーンに映すと、横の線が消えてしまう欠点も。その点、はっきり見えて、低解像度にも耐えられるのがゴシック体だ。カジュアルな印象とインパクトも兼ね備えているので、プレゼンには最適。“見せる資料”にもってこいのフォントといえよう。
「プレゼンスライドなど見せる資料の場合、Windowsはメイリオや游ゴシック、Macはヒラギノ角ゴのフォントが美しくて読みやすいですね。読ませる資料では文字が細いことが重要。Windowsなら游明朝、Macはヒラギノ明朝をお勧めします」
フォント同様、「行間」も意識する機会は少ない。ソフトの初期設定のままだと行間が狭すぎることが多く、読んでいて圧迫感を覚えることがある。理想的な行間は、文字サイズの0.5~1文字。ただし1行の文字数が短ければ、行間が狭くても気にならないので、扱う文章によって調整したい。
書面いっぱいに文章や表を盛りこみ、時にはフォントを大きくして余白をつぶす……。そんな「情報は多いほど得」の精神は、伝わるデザインを目指すうえでは捨てるべきだ。余白のない資料は読んでいて気詰まりになる。
「プレゼン資料や図形の中に文字を書く場合、上下左右に1文字分以上の余白が必要で、文字数が多いときや1行が長いときは余白を多くするといい」
報告書【×BEFORE】長い文章の資料でゴシックを使わない
報告書やレポートなど、長い文章で構成された「読ませる資料」では、「明朝体」を選ぶのが適切。「ゴシック体」のような太い文字を使うと、誌面が黒々としてしまい、可読性が下がってしまう。
[2]センタリングはなるべく使わない
横書きの文書の場合、読み手は左上から右下に読み進めるのが一般的。タイトルや小見出しを中央に配置する文書が多いが、これだと文の開始点を見つけにくく、読み手にストレスを与えてしまう。
[3]インデントは入れない
インデントする理由は、段落の開始場所をわかりやすくするため。短い文章で構成された資料で行頭を1文字空けると、左端がガタガタしてしまい、読みづらくなってしまう。
[4]個条書きの項目がはっきりしない
個条書きで大切なのは、どこまでが1つの項目なのかをひと目でわかりやすくすること。2行目以降を1文字分ぶら下げてインデントすれば、「・」だけが外へ飛び出し、個条書きの項目を認識しやすくなる。
報告書【○AFTER】読みやすいのは誌面が黒々しない明朝体
見出しを強調しようとして下線を使うと、あまり目立たず、字と重なってしまう欠点も。本文が明朝体でも、見出しにはゴシック体を使うのが○。読みやすくて目立ち、簡単にメリハリがつく。
[2]基本はすべて左揃え
小見出しを含め、すべて左揃えで配置する。表紙ページなど、文量が少ない場合のみ、中央揃えも可。ワードの文章で「【」「『」を行頭で使う場合は、「行頭の記号を1/2の幅にする」という機能を使うと○。
[3]段落間隔を広げ、項目をグループ化
関連のある項目を近くに配置することで、全体の構造が明確になる。左の文書の場合、行間よりも段落間隔を広くして項目ごとにグループ化している。こうすることで、読み手が直感的に理解しやすい。
[4]個条書きは「ぶら下げインデント」
「ぶら下げインデント」に加え、段落間を空けることで項目がさらにわかりやすくなった。Office系のソフトの場合、範囲を指定したうえ右クリック→「個条書き」を選択すれば、細かい設定を指定できる。