以上の工程で全体の骨組みが完成した後は、「揃える」作業に。文章、表、図の要素が乱雑に置かれている資料は、散らかった部屋にいるように心地よくない。そこで仮想の赤い点線を引き、その上に要素が揃うように配置していくと、一気にレイアウトが引き締まる。

また文字も揃えたい。学校で教わってきた、段落頭に入れる1文字分の空白(インデント)は、左端が凸凹になって見映えが悪くなってしまう。インデントは、段落がどこから始まるかを示すのが目的。1段落の文量が少ない場合、左端は全部詰め、段落ごとの間隔を広げれば、わかりやすさとデザインの美しさを両立できる。

そして最後に「文字に強弱」をつけていく。「・」や「※」の記号をつけたり、下線を引く方法は、実はあまり目立たない。それよりも文字を太字にしたり、サイズを大きくしたほうが目を引いて、「ここが大事」と直感的に伝えることが可能だ。同様に、フォントを変える、色を変えるといった方法も有効だが、3つ以上の方法を組み合わせると読みにくくなるので、あれこれ入れないよう注意しよう。

資料を作成していくうえで大切なのは、「余計なことをしないこと」だと高橋さんは言う。

「色や書体など、資料の装飾に時間を費やしても、よい資料はできません。読み手が内容を理解するのにも時間がかかる。余計なものは省き、シンプルにまとめたいですね」

提案書【×BEFORE】長い文章の資料でゴシックを使わない

[1]要素をバラバラに配置しない
見出し、本文、表、画像など、要素の配置が揃っていないと、見た目が悪くなってしまい、読み手に負担がかかって、内容に集中できない。多くのソフトに標準で備わっている「配置」機能を活用し、スッキリしたレイアウトを目指そう。
[2]文字や図形を飾りすぎない
輪郭や影などで文字を装飾しすぎない。図形を使う場合、塗り(図形の内側)と枠のどちらかだけに色を付ける。楕円を使うと統一感がなくなることが多いので注意しよう。色は全体で3~4色に抑える。重要な個所だけ強調するように。
[3]単語の途中で改行しない
強調したい文やまとまりのある言葉の途中で改行するのは避ける。また最後の行が1、2文字だけはみ出て、スペースが広がっているのも印象がよくない。句読点を含めて最低4文字はほしい。できるだけ単語と単語の間や、読点の位置で改行しよう。
[4]エクセルのグラフをそのまま使わない
エクセルで作ったグラフは、初期設定のままでは余計な要素が多く、見栄えが悪い。また、手抜きに見えてしまう。読み手に伝えたいことは何かを考え、データの理解を助ける要素以外は排除しよう。できるだけシンプルにすることが重要だ。

提案書【○AFTER】見出し、囲み、色…装飾しすぎは伝わらない

[1]余白をとってゆとりある配置に
どんな資料であっても、枠内ギリギリまで文字や図があるレイアウトは圧迫感が生じて読みにくい。必ず1文字程度の余白を設けよう。また、グラフや挿絵を掲載する場合、四角い枠や背景を付けると、整った印象を与えることができる。
[2]図と文字に強弱をつける
強調したい文字は太く、図は大きくして、思いきって強弱をつけよう。ただしなんでもかんでも強調していると、重要なポイントが埋もれてしまう。何を伝えたいのかを考えたうえで、優先順位をしっかりつけ、文字の太さやサイズで階層をつくる。
[3]行間を広めにとる
1行が長くなると、より広い行間が必要になる。パワーポイントの初期設定の行間はとても狭い。右クリック→[段落]→[インデントと行間隔]で行間設定を変えよう。1文字分よりも少し狭いくらいの間隔が理想。書体も判読性の高いものを選ぶ。
[4]表やグラフを見やすく変える
エクセルの初期設定の場合、凡例がグラフから飛び出ている、グラフの補助線が目立ちすぎる、色にグラデーションがかかっているなど、煩雑な印象をあたえてしまう。余計な線や影をとり、色や凡例の位置を変えれば、見やすくなる。
(PIXTA=写真)
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