変化に対応できる人材になってほしい
だが、しだいに販売不振となる。07年に、売り上げは240億前後に落ち込む。08年秋のリーマン・ショック以降、業績が一段と悪化し、資金繰りも苦しくなる。会社は危機を乗り越えるため、分譲マンションの事業を大幅に縮小する。子会社に、分譲マンションの販売などに関わっていた社員を転籍させた。
08年、45歳で子会社の代表取締役になった。降格に近い人事だったという。リストラが始まり、55人の社員のうち、15人を辞めさせることになった。引導を渡すのが、松岡さんの仕事だった。
09年、親会社・ジョー・コーポレーションは、ついに民事再生法の適用を申請した。
「責任は感じていました。今も、その思いは消えません。申し訳なかった、と思っています」
同年、退職をした。会社は12年に再生手続きを終結したが、15年に自己破産を申請した。
松岡さんは09年に、NYホームの経営をスタートさせた。50歳を目前にした起業である。現在、20人ほどの社員のうち、前の不動産会社の部下が3人いる。その1人は、子会社のとき、辞めてもらうように頼んだ女性社員だ。
「社員にも、お客様やオーナー様など、様々な方に感謝しています。私は中卒でありますが、幸運に恵まれていました」
今の会社では、採用時「学歴不問」としている。エントリー者の中に、高校を辞めた人を見ると、かつての自分を思い起こすという。
「背伸びをすることなく、身の丈に合った経営をしていきます。社員には、変化に対応できる人材になってほしい。私も、そうでありたいと思っています」