『わが闘争』や『共産党宣言』は、人々がなぜこのような思想に傾斜していったのか、考えながら読ませます。これらの本は悪についての勉強でもあります。将来、子供が大企業に勤めて、役員まで上り詰めたとき、社長から不正な会計処理をしろと言われたら、どう動くのか。悪に耐性がないと、判断を誤ります。
内容を自分で料理し、消化できるようにするには、書くこともセットでやらせましょう。人は理解していないことは書けないし、書けないことは本当には読めていないのです。
私がオススメするのは、「印象に残ったところを1カ所でいいから、書き写しなさい」と課題を与えること。引用です。最大でも1000字以内に内容は絞り込ませます。そして、引用した文に対して、思ったことを書かせる。もう1つは、要約です。1冊読んだら、書いてある内容をまとめさせます。これらができるようになったら、「敷衍(ふえん)」にも挑戦させましょう。敷衍とは、要約の逆で、詳しく説明すること。簡単なフレーズを引っ張ってきて、自分の言葉で説明させます。
親が指導するのが難しければ、本読みの家庭教師を頼むのも手です。多少高くても学生ではなく、大学の助教など、アカデミズムで仕事をしている人を選びましょう。読む力がついた小学高学年~中学2年くらいまでにこの訓練をすることは、エリートへの登竜門になるはずです。
※ブックリストは、現在発売中の小社刊『プレジデントFamily 2015年秋号』をご覧ください。
同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。外務省時代は優れた情報収集力と人脈を生かして、ロシアをはじめ世界のエリートと渡り合った。著書に『国家の罠』(毎日出版文化賞特別賞受賞)、『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮――ノンフィクション賞受賞)ほか、多数。