ハックスリーの『すばらしい新世界』、オーウェルの『一九八四年』、スウィフトの『ガリバー旅行記』などが入っているのは、ユートピア主義に対する警告です。イギリスには清教徒革命のトラウマがある。エリートというのは、ともすると理想に走って、物事を一挙に進めようとしてしまう。それでは失敗するということを教えています。

オバマの自伝は大統領が代わったら差し替えられるでしょう。いま、この瞬間に読むべき本として挙げられています。ロシアについてはホラー小説『ナイト・ウォッチ』や、実在したソ連時代の連続殺人鬼の話をモデルにした『チャイルド44』が入っている。どちらも映画化されていて、子供が入りやすい作品を選んでいます。ロシアのことは知らないといけないと考えているのが伝わってきます。

世界的にベストセラーとなった『ダ・ヴィンチ・コード』や、ラジオ番組を小説化したSFコメディー『銀河ヒッチハイク・ガイド』、ほかにも読みやすい青春小説などが多数入っています。これは大衆と話ができるリーダーに育てるため。日本の大正教養主義とは違います。日本の旧制高校の生徒は、菊池寛や吉川英治の話はしなかった。これらのリストからは、大衆に支えられないと民主主義社会のリーダーは務まらないと考えているのがわかります。

過去に禁書であったり、物議を醸した本は、ただ与えても子供は消化できません。宗教だったら、何に対するアンチなのかを教えなくてはいけない。『悪魔の詩』はイランのシーア派、『種の起源』はキリスト教原理主義、『ダ・ヴィンチ・コード』はカトリック。そういうアンチがあるところで、聖書とコーランも読んでみましょうと提案しています。