マツダへの影響は「今のところない」

最後に日本市場はどうか。日本はディーゼルに対するマスイメージがもともと高くなかったという点はアメリカに似ており、ディーゼルを理解している人の多くは排出ガス規制をクリアしたものでもクリーンなわけではないことを承知のうえで好きで乗っているという点はEUに似ている。VWはブランドイメージがガタ落ちになることは避けられず、近々日本市場への投入が計画されていたディーゼルモデルについても計画がキャンセルになる可能性もある。

他メーカーも、これまでディーゼルに関心のなかった新規コンシューマーの取り込みについては大幅後退を余儀なくされるだろう。一方、元からディーゼルにポジティブなイメージを持っていたカスタマーについては動向が読みにくい。

「少なくとも当社のショールームでは、9月最終週の土曜も来店されるお客様が『マツダさんのディーゼルは大丈夫なんだよね』と、そのまま成約していただけるケースがほとんどでした。今後はわかりませんが、今のところは大きな影響は感じられません」(東京都内のマツダ系販売会社幹部)

一方、ドイツ車のディーラーでは、ディーゼルそのものの販売より、ドイツ車のブランドイメージが下がることを心配する声が聞かれた。

「メルセデスベンツの商品特性を気に入って買っていただいているお客様はそうそう離れていかないという実感がある一方で、ディーゼルがダメだったら先進安全システムはどうなんだ? といった技術への疑念を持たれるのはある程度仕方がない流れだと思っています。信頼感の回復は誰かがやってくれるわけではない。我々の手でで何とかするしかない」(メルセデスベンツを扱うシュテルン店関係者)

VWのスキャンダルを機に、排出ガス規制の是非論からマーケット動向まで、一気に波紋が広がっているディーゼル問題。エンジニアの間からは、緩い加速しか行わない現在のモード測定そのものが疑問視されると、問題がガソリンエンジンにも飛び火して自動車産業そのもののあり方が問われかねないということで、何とかフォルクスワーゲンの不正だけが悪かったのだということで収束してほしいという声も漏れ聞こえてくる。事態はまだ進展中で、顛末はまだ霧の中。今後の展開が興味深いところだ。

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