排出ガスは飛躍的にクリーン化できる

「このムーブメントは非常に興味深い」と、レポートを読んだトヨタ自動車のあるエンジニアは言う。

「ニュースを耳にしたときはICCTはディーゼルそのものを存在悪ととらえているのかと思いましたが、実際の彼らの主張は、より厳しい排出ガス規制に適合させる技術開発を加速させることが、欧州の大気汚染問題を緩和するだけでなく、欧州メーカーの競争力をより向上させることにつながるというものでした。

実際に市場で戦っている欧州の自動車メーカーにとってはネガティブに受け取られるでしょうが、あくまでも高みを目指すという欧州委員会のポリシーにはむしろ合致していて、各国政府が調査を始めるという話も伝わっています。地力がありながらこのところ緩い規制に甘えて“眠れる獅子”だった欧州メーカーがディーゼルバッシングで目覚めて本気になるのかどうか注目に値すると思います」

各社が排出ガス規制を不法にクリアしているかどうかについての実態は今後の調査を待たねばならないが、気になるのは今後のディーゼルの行方である。まず、そもそもディーゼルの排出ガスを飛躍的にクリーン化できるかどうかだが、これについてはできると答えるエンジニアが大半だ。

「現行のユーロ6や日本のポスト新長期(現行)規制であれば、NOx(窒素酸化物)触媒方式で十分にクリアできます。さらに厳しい規制となると、NOxとPM(粒子状物質)のバランスを取るためには尿素SCR(選択還元触媒)を使うことになるでしょうが、それでクリアできると思います」(デンソー幹部)

「ディーゼルの排出ガス処理装置が注目されますが、重要なのはエンジンアウト(処理装置を通す前の排気)をできるだけきれいにすること。元の有害物質が少なければ、処理装置も小さいものですむため、簡単にクリーン化できるし、コストもより下げられる。ディーゼル燃焼における有害物質の生成のメカニズムが相当解明されてきていることからも、これ以上は無理とはまったく考えていない」(マツダのディーゼル開発担当エンジニア)