フォルクスワーゲンの新型「ゴルフ」が発売した。歴代ゴルフは日本自動車輸入組合による「外国メーカー車モデル別新車登録台数」で2003年~2015年まで首位を記録していたが、2016年にその座を明け渡している。8代目となる今回のゴルフの実力はどうなのか。交通コメンテーターの西村直人さんが試乗した――。
筆者が試乗した新型ゴルフ「1.5lモデル」(左)と「1.0lモデル」(右)
筆者撮影
筆者が試乗した新型ゴルフ「1.5lモデル」(左)と「1.0lモデル」(右)

安全性能をクリアしつつ、小型化を実現した

フォルクスワーゲンの新型「ゴルフ」が登場した。ハイライトはゴルフ伝統の広いキャビンとボディのコンパクト化、シンプルな内外装デザイン、優れた先進安全技術と内燃機関における電動化へのフル対応だ。以下、順を追って説明したい。

8代目となり全長こそ30mmほど大きくなった(4265→4295mm)が、使い勝手を決める全幅と全高、そしてホイールベースは若干だが小さくなった。

もっとも従来型と比較して全幅は1790mm(-10mm)、全高では1475mm(-5mm)、ホイールベースにしても2620mm(-15mm)と数値にすれば僅かな小型化だ。

一般的に各国各社から発売される新型車は、時代が求める高レベルの衝突安全性能を確保する観点から、代替わりではボディが大型化する。そうしたなかで安全性能をクリアしつつ、小型化したゴルフの存在は魅力だ。運転席からの死角も少なく見切りが良いので、狭い場所など運転環境が厳しくなるほどメリットが感じられる。

また、自宅が集合住宅で駐車場が立体式の場合、車検証上の数値が重要になるが、都市部の立体駐車場では車幅1800mm以下とする場所も未だに残る。さらに、ここも従来型からの継承だが、トレッド(左右のタイヤ間距離)が1550mm以下と広すぎないため駐車パレットの両端にホイールを擦る心配も少ない。

こうしたユーザーの使い勝手を第一に考えた車体設計は、1974年に登場した初代ゴルフから47年間、一貫しているところであり、大衆車造りに精通しているフォルクスワーゲンらしさが感じられる部分だ。

新型「ゴルフ」1.0lモデル
筆者撮影
新型「ゴルフ」1.0lモデル

2016年、BMWミニに首位を明け渡した

ところで、日本自動車輸入組合の「外国メーカー車モデル別新車登録台数順位の推移」によると、2003年~2015年まで歴代ゴルフは1位を記録していた。2003年といえば5代目ゴルフが日本導入された年だが、価格、走り、そして使い勝手など総合性能の高さが日本におけるゴルフ人気を支えたわけだ。

2016年には、2014年に3代目となったBMWミニに首位を明け渡した。2位ゴルフとの差は1746台と僅差だったが、10年以上首位を守り続けてきたゴルフが転落したことは当時、話題となった。この年は、従来型7代目ゴルフの日本における販売期間の折り返し地点にあたる。

転落の要因には2015年9月の出来事も関係する。フォルクスワーゲンが北米で販売するディーゼルエンジン車の制御プログラムに不正が見つかったのだ。このことが日本でのガソリン車販売に少なからず影響を及ぼした……。

一方のBMWミニ快進撃には訳がある。2016年の3月、BMWミニに新型コンバーチブル(オープンボディ)が加わり、4月にはディーゼルエンジン搭載車が10モデルに拡充され、さらにMINIクラブマン(ミニ5ドアのルーフを延長したステーションワゴン風ボディ)に低価格グレードや4輪駆動モデルが追加された。ボディやエンジンバリエーションを増やしつつ、価格訴求力を高めたBMWミニシリーズの戦略勝ちともいえる。

ちなみに2016年の3位はメルセデス・ベンツCクラスで1万7780台。その後、現在に至るまでBMWミニが首位(2020年は2万195台)を守り続けている。ゴルフは、2020年にはメルセデス・ベンツAクラス(1万673台)に抜かれ、3位(1万264台)へと順位を落とす。