日本の道路環境なら、1.0lモデルで十分な性能を発揮できる

筆者は1.0lと1.5lの両モデルに300kmほど試乗した。結論からして新型ゴルフには、まず1.0lモデルから試乗されることをおすすめしたい。日本の道路環境において、実用車ゴルフに求められる十分な性能を発揮してくれるからだ。

もっとも車両重量1310kgに対して1.0l(110PS/200N・m)だから気持ちが高ぶるような速さは期待できないが、ACC機能と車線中央維持機能の組み合わせである「Travel Assist(自動化レベル2技術)」を機能させて淡々と高速道路を走らせれば、25km/l以上の燃費数値は誰でも達成できる。

泣き所のひとつだったトランスミッションも大幅に改善された。乾式クラッチ方式の7速DSG(フォルクスワーゲンにおけるデュアルクラッチトランスミッションの名称)は、発進時のクラッチ制御からアップ&ダウンの変速に至るまで非常にスムースになった。

課題だったアイドリングストップ状態からの再発進時も、エンジンスターター機能を受持つ48Vマイルドハイブリッドシステムによって完全に克服した(冷間時は従来通りの12Vエンジンスターターを使う)。

従来型の乾式クラッチ時代には、アイドリングストップ後のエンジン始動からワンクッション置いてアクセルペダルを踏み込む必要があったが、新型ゴルフではまったくそこを意識することなく、動き出したいタイミングでペダル操作を行えば従順に反応してくれる。

※編集部註:初出時、「湿式クラッチ方式になった」としていましたが、取材時の広報部の発表内容に誤りがあり、新型ゴルフでも乾式クラッチ方式を採用していることが判明しました。訂正します。(7月19日13時35分追記)

新型「ゴルフ」1.0lモデルの車内
筆者撮影
新型「ゴルフ」1.0lモデルの車内

アウディ「A3」と乗り比べてみた

静かであること、これも新型ゴルフの美点だ。3気筒エンジンは構造上、低速域と中速域に山がある特有のトルク特性があり、やや甲高い燃焼音も耳に届くが、新型ゴルフではフラットな扱いやすいトルク特性に改善。同時に、ターボチャージャーの消音効果を最大限取り入れ遮音性を高めた。

この直列3気筒1.0lガソリンターボ+48Vマイルドハイブリッドシステムは、ほぼ同時期にフォルクスワーゲングループのアウディ「A3」にも搭載されている。興味津々だった筆者は、早速両車を乗り比べてみた。

走行性能を左右するエンジンスペックから、日常使いを決める7速DSGの各ギヤ比に至るまで2車はまったく同一で、むしろ車両重量はA3が30kgほど重い。

それにもかかわらず、加速フィールや車体の反応はA3が優勢で、アクセルペダル操作に対する反応が10~15%程度良いと感じられた。さらに両車の1.0lエンジン搭載車は、前後サスペンション形式も同一だが、荒れた路面での乗り心地ではA3が上回っていた。

こうした現象はフォルクスワーゲンとアウディにおいて、過去から認められていたもの。出力特性変化と呼ばれる部分をブランドに応じて味付けで変化させた結果だ。

わかりやすくアウディのほうが速くて上質な走りが楽しめる一方で、実用領域での燃費数値はフォルクスワーゲンが勝る。標準装備品が多く、車両価格が安価であることもフォルクスワーゲンの強みだ。これは今回の2車でも同じ結果だった。