女性向けカクテル梅酒で売り上げ25倍

中野BCの2代目社長である中野幸生(75歳)はこう語る。

梅エキス「紀州の赤本」などの機能性食品。

「和歌山県では古くから家庭で梅を煮詰めた梅エキスを作っていました。戦時中には兵士が持参し、腹痛や腸チフスなどにも効果があったと聞いています。いわばローテクの梅エキスに現代科学によるエビデンス(証拠)を加えれば、ハイテクに変えることができると考えています。認知症にも効果があるのではないかと、現在、京都府立医科大学と共同で研究しています。また、北海道情報大学の協力の下、同大のモニターシステムを活用したヒト臨床試験を行っており、今年中に様々なデータが集計されることになっております」

中野BCは梅の研究開発企業といっていい。地元名産の南高梅を使った梅果汁の生産を1971年から始め、現在、国内シェアトップで、飲料・食品メーカーに供給している。

79年から梅酒の製造を始め、度数20度の本格梅酒「紅南高」をはじめ、同社が「カクテル梅酒」と呼ぶ様々な種類の梅酒を開発、現在まで35種類を数える。地元産のみかん、はっさく、ブルーベリー、レモン、山椒、国内産のいちご、緑茶、ゆず、シークワーサーなどを使った梅酒の他、ニンジン、ホウレンソウ、レタスなど7種の野菜を入れた梅酒もある。主に飲食店を中心に供給しており、2007~2014年の7年間で梅酒の売り上げを25倍にも伸ばした。

中野BCというユニークな社名だが、もともとは中野酒造だった。初代の中野利生が醤油醸造から始めて、焼酎、清酒と業容を拡大、焼酎が「富士白無限」、清酒が「長久」の銘柄で、それぞれ県内トップの売り上げを誇るまでに成長した。清酒は全国新酒鑑評会において何度も金賞を受賞している。

梅酒は発売当初は売れなかったが、地道に作り続け、10年ほど前から梅酒ブームの影響で急に売れ始めた。当初からマーケティングや新商品開発などでリードして売り上げ拡大に寄与したのが幸生の長男で副社長の幸治だ。

「女性社員2人とマーケティング部を立ち上げ、女性向けの商品開発やパッケージデザインに力を入れました。家庭では作れない梅酒を作ろうと、梅酒に果実などを加えたものをカクテル梅酒と銘打ったのですが、業界では『そんなものは梅酒ではない』と悪口を言われたものです」

次々と新商品を作り、多い時には2カ月ごとに発売した。だが、品質にはこだわり、例えば「紀州完熟みかん梅酒」は、ふさわしい品質のみかん果汁を提供してくれる果樹園に協力を得るために5年もかけたという。

清酒も幸治が音頭を取って、機械仕込みの大量生産から手作りによる小仕込みに比重を変え、それまで販売していた「紀伊国屋文左衛門」の銘柄を2006年にリニューアルした。これが、おいしいと評判になり3カ月で完売。その後も人気が続いている。

現在、マーケティング部の他に各部署の女性9人を集めた「チームなでしこ」、若手男性社員6人による「SAKEメン」というプロジェクトチームがあり、彼らの意見を活かした新商品開発を行っている。女性社員の活躍が社内の活性化につながっているのだ。

同社の売り上げは2014年度で31億円だが、その5割を梅酒、梅果汁、梅エキスで占めている。