中国人の旅行は団体から個人にシフトしていく

東京・銀座をうめつくす中国人観光客。

インバウンドをビジネスチャンスにするためには外国人旅行者の好みや行動特性をつかむことが大切だ。特に今後大きなウエートを占める中国人観光客を研究することはきわめて重要になる。前述のウェイボーやバイドゥー(百度中国最大の検索エンジン)などは中国人観光客にとってバイブルのようなSNSサイトで、彼らはそれらで観光スポットや土産物を調べまくって日本にやってくる。この中で重要な役割を果たしている中国人留学生などの助けを借りて観光客がチェックしているサイトを追いかけて内容を分析すれば、彼らの志向や動線をつかみやすい。

今、日本にやってきているローエンドの中国人観光客の月収は大体10万円レベル。中国の平均月収が3万円程度だから、比較的稼ぎがいいミドルクラスだ。5万9000円ぐらいの3泊4日のパッケージツアーで日本にやってきて、食費はスーパーの惣菜などで節約しながら、銀座や秋葉原で土産物を爆買いするのが通例。月収10万円でも親や親戚から餞別をもらってくるから、20万~30万円くらいは平気で買い物していく。

日本に初めてやってくる中国人の団体客はこのパターンが圧倒的に多いが、2回、3回と訪日を重ねると行動も変化してくる。前述したように、その先行指標になるのが台湾人だ。

台湾人のベテラン旅行者は、東京、大阪はもちろん、日本の温泉地は10カ所ぐらいは行っているだろうし、定宿も持っている。町々の美味しい飯屋も知っている。「私は秋田が好き」とか「金沢の風情がいい」と特定のスポットにこだわる人もいれば、「今度は飛騨高山を集中的に攻めよう」という具合に日本をくまなく見て回ろうとする意識も高い。

中国人の日本旅もいずれ団体旅行から個人旅行にシフトしていくはずだし、日本好き、日本通はもっと増えるだろう。高価な中国のマンションなどを1つ売って日本に別荘を、という富裕層もぼちぼち現れてきている。そうしたニーズを先取りして応えていけば、インバウンドビジネスが本格的に日本経済の底上げにつながっていく可能性は高い。

(小川 剛=構成 AFLO=写真)
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