実態としては、長い間主張されたにもかかわらず、様々な理由で進まなかった労働時間の改革として導入されている面もあり、単純な評価はできないが、ワークライフバランスの観点から見てもサラリーマンの働き方への影響が期待される。

ローソン、ヤマト運輸、などで注目された企業の「強い現場」力

また、これまで常識だと思っていたことが案外脆弱な基盤によって支えられていることが明らかになっている事象もある。

最も卑近な例は10年のエネルギー白書が、「日本の電気料金は、特に欧州諸国との対比では、家庭用・産業用ともに同等あるいは低水準」と分析した電気の価格である。原子力発電のリスクを反映しないコスト計算であったことがいまや明らかになってきている。

同時に、高価格で、ほぼ国債並みの信用度があった東京電力株が、実は砂上の楼閣状態であったことも明らかになっている。実際、一時期、2000円以上していた株価が、現在は300~500円近辺になり、4分の1程度である。東電の株価を安定的な資産運用のために頼りにしていた方々には申し訳ないが、これもある意味ではいいことである。

株式市場では、あくまでも東電は普通の株式会社であったことの再確認であり、東電は安定、という「常識」がいかに脆弱なものであったかを知らされた事件でもあった。

また政治の世界があそこまで人材不足に陥っていたことも、その脆弱さが明らかになった。経営の世界では、“職務”経験を積むことではじめて人が育つ、ということがほぼ常識になっている。だから多くの企業は、人材のローテーションや配置転換にはことさら多くの配慮をし人を育てておくのである。

だが、長い間野党であった民主党は当然、実戦経験がないわけであり、何らかの対策を講じない限り、人は育たない。賛否両論はあろうが、自民党の長期政権は少なくとも、多くの人材に継続的にミニ実戦の機会を与えるチャンスがあったのかもしれない。