「ほっと安らげるいつも通りの家」
そんなあるとき、私は児童会の副会長に立候補します。
その選挙演説でのこと。全校児童約1500人を前にして、ピンとあることがひらめきました。そこで私は開口一番、こう言ったのです。
「おはようございます! 頭のでっかい高濱正伸と申します! みなさんの2倍、3倍は脳みそがあります!」
みんなから「おおー!」という反応。さらに、お辞儀をしたら頭がマイクにゴン! これがバカ受けで全校児童が大爆笑です。
すると、なんと次の日からいじめはピタッとやみました。笑いに持っていかれると、いじめる側としてはいじめ甲斐がなくなってしまうのですね。
つらかった時期を支えてくれたのは間違いなく、母のいる家でした。
一度ギューッと抱きしめてくれてからは、何も特別扱いせず、「いつも通りの家」でありつづけてくれたのです。だからこそ、私は家に帰れば安らげたのだと思います。
これとは逆に、毎日のように「今日は大丈夫だった?」などと一緒に心配されたりしたら、あるいいは、いじめの首謀者の子の家に乗り込んで事件沙汰にされてしまっていたら、家は私にとって安らぐ場所ではなくなっていたでしょう。
悩み苦しんでいるときは、もちろんつらいものです。でも、その苦しみから抜けだしてみると、「お母さんやお父さんがいつも通りでいてくれて、よかったな」と子どもは思うものなのです。
思春期になると、子どもは親になかなか本心を見せたがりません。それと同時に、なかなかすぐには変われず、親からすればグズグズと停滞しているように見え、つい口出ししたり、手っ取り早いアドバイスをしたくなったりすることも多いと思います。
けれども、最後に結局心のよりどころにしているのは、家族です。そうであればこそ、親は思いを馳せ、「ほっと安らげるいつも通りの家」を貫いてほしいと思います。
※本連載は書籍『へこたれない子になる育て方』からの抜粋です。