父子間の対話を活性化する


生田家のパパと息子たちの「写メール」アルバム

トウサンを発行する際、生田さんは真希夫人の了解をもらった。子供らしい成長を後押しするために、家庭内に流通させたいという生田さんの発案に、彼女も賛成してくれた。

基本ルールは生田さんが決めた。

1トウサンは現金100円と交換できることが原則。そのほかには小学校卒業までは、現金のお小遣いは一切与えず、トウサンで代替すること。

子供たちは家事を手伝ったり、何かに挑戦したりして、生田さんを感動させて、トウサンを稼がなければいけないこと。ゲーム機以外なら、子供はトウサンを現金と交換して好きなものを買えること、などだ。

工作が好きな長男は、新聞紙の束を棒状に丸めて三角形をつくり、それを4つつなげてピラミッド形に組み立てたり、段ボールでペン立て付きの勉強机を作ったりした。

また、父子で出かけた魚釣りで、生まれて初めて魚を釣り上げたり、母親の家事を手伝ったりしたときに、当初1トウサンずつ与えていた。

そんな生田さんが思わず10トウサンを奮発したのが、長男が幼稚園の年長時に父子で出かけた、神奈川県伊勢原市にある大山(おおやま)登山。標高1200m超の山に子供が登れるかどうか、彼も半信半疑で連れていったのだが、泣き言も言わずに往復約5時間歩き通した長男に感動し、10トウサンを手渡したのだという。

生田さんにとってトウサンは、息子たちとの大切なコミュニケーションツールになっていった。

また、この家庭内通貨を陰で支えてくれたのが真希夫人だった。子供たちが何かを作ると、まず家にいる母親に知らせに来る。彼女はそれをホメたうえで、「お父さんに報告したら、きっといいことがあるわよ」と、言い添えてくれていたからだ。

「1万円札が日本政府の信用で成り立っているように、家庭内通貨トウサンも、子供たちの私に対する信用で成り立っていたわけです。妻が陰で私を立ててくれたことで、トウサンと私の信用も上がるという、理想的な展開でしたね」

トウサンの陰にカアサンあり、だ。