親の価値観を換金時に子供に伝える


生田家のパパと息子たちの「写メール」アルバム

子供がトウサンを稼いで貯めれば、それを使う場面が出てくる。生田さんは、トウサンを換金する際に、親の価値観を伝えようと考えた。

たとえば、次男に買い与えた囲碁のドリルで、当初それを10枚やれば5トウサン与えると約束した。だが、予想外に次男の上達が早く、すぐにやり終えるのを見て、「これは簡単そうだから3トウサン」と条件を急に変更したら、次男が「エーッ!」と不服そうな顔を見せた。

「私が勝手に条件を変更しているわけですから、当然ですよね。でも、トウサンは私の感動した度合いが基準ですから、そこで親がブレてはいけません。『だってお母さんのお手伝いで、すごく頑張ったときが3トウサンだったから、この程度のドリルなら、やっぱり3トウサンでしょう?』と、私なりに説得して、次男にも納得してもらいましたよ」

親が伝えたい価値観が、子供のそれとは違う場合、親には説明責任が生まれる。そこで頭ごなしに命令したのでは、トウサンも親の信用度も下がらざるをえない。両親の考え方や教育方針があいまいだと、家庭内通貨は、子供を混乱させてしまう危険性も併せ持つと、生田さんは言う。

「子供にわかるようにかみくだいて、自分の価値観を伝える必要があるので私もかなり鍛えられました」

銀行員時代の生田さんは法人融資畑が長かった分、お金の怖さも痛感していた。お金のせいで豹変する人たちを嫌というほど見てきたためだ。

「年収の多さや、立派な肩書だけではダメです。心がきちんと整っていて、年収や肩書に見合う人格が伴っている必要があります。でないと、お金のせいで、人はすぐダメになる。お金の使い方は、その人を測る尺度でもありますから」

家庭内通貨は、そんな邪悪な面を持つお金から、子供を一定期間遠ざける機能があることにも気づいた。