ソーシャルゲームでは、1年半から2年に1度の頻度でキーカテゴリーの変遷(釣りゲーム→アクションバトル→カードゲーム)が見られた。このスピードは専用機と比較して非常にはやい。日本人がカードバトルのゲーム性を好むといった理由だけではなく、そこには明確な仕組みが存在していたと考える。つまり、(1)カードゲームはゲームデザイン上、客単価(ARPU)が高くなりやすく、(2)人気タイトルはライフタイムバリュー(顧客生涯価値)が高くなるため、(3)人気タイトルの提供会社が豊富な資金力で大量のマーケティング費用を投下することで、売り上げを向上させる好循環に入った、と分析できる。結果として、資金力のある会社が提供する大型タイトルに収斂が進むと同時に、ゲーム内のアイテムの換金性が高まるなど「射幸心を促進している」と問題視され、2012年ごろから市場は縮小する。
その間、携帯電話はスマートフォンに置き換わり、ゲーム市場も「ブラウザゲーム」から「アプリゲーム」へと移行した。DeNAもブラウザゲームではプラットホームの保持者であったが、スマートフォンの普及に伴いアプリゲームを開発する企業のひとつという位置づけとなった。代わってプラットホームの保持者となったのは「iOS」のアップルと「Android」のグーグルである。ブラウザゲームは開発コストが低く新規参入も容易だったが、アプリゲームでは相対的に開発コストが高くなり、タイトルにも規模が求められる。こうした変化により、ゲーム業界においては、バーティカルに専門性のある事業モデル(開発/マーケティング等で専門的な技術やリソースを保有するモデル)によって利益を生み出す力が必要となっていった。
任天堂はゲーム業界におけるこうした構造変化について早い時期から認識し、「クラブニンテンドー」(※2)のようにゲーム機単位から顧客単位でサービス提供を試みてきたものの、大きな成果を達成することができなかった。今後はDeNAという外部資源を活用することで不得意とするサーバー管理や運用面を強化する効果が期待できる。