スペシャリストとして“自分がどれだけワクワクできるか”
組織の構造はもちろん、部署内における評価基準や目標設定の変更、さらにはマネージャーやメンバーの入れ替えも発生。スペシャリスト人材を中途採用で迎え入れる一方、意欲があり特化した専門領域を持っていて、かつ事業折衝もできるメンバーは、20代であっても積極的にマネージャーに抜擢していったそうだ。
「専門機能会社として能力の底上げを図るには、マネジメントを後回しにしてでも、とにかく各部署で専門分野に特化した人材が必要です。万が一マネジメントが不足した場合は、自分や他の執行役員がしばらくの間兼務で回す、という覚悟もしていました。社内向けにも“ゼネラリストは要らない。スペシャリストになれ”というマインドチェンジを強く打ち出しました」と語る山村氏。
さらに「専門性を磨いてスペシャリストになれば、あとは楽しいことをやるだけです(笑) 事業計画と目標に対して最低限の実装を行うのはもちろんですが、それだけでは何の進化もありません。目の前にあるプロジェクトから具体的にやりたいことを見出したり、最新技術にチャレンジしたりと、“作っている自分がどれだけワクワクできるか”が重要なポイントです。楽しめればモチベーションや成果物のクオリティが上がり、さらなる新しい発想も生まれてきます」と続けた。
また、ITマネジメント統括部のメンバーに対して昨年4月、山村氏は“WhyからWhatへ”というメッセージを送ったそうだ。これは“何のためにいるのか”ではなく“何をやっていくべきか”への意識的な改革を意味している。企業では一般的にビジネスサイドの意見が強くなりがちだが、意識改革によりIT部門からも主張できる、“ITで勝つ”ために自分たちで自ら機能進化できる体制作りを目指したのである。
こうした組織改革は、個人および専門機能会社としてのスキルアップ以外にも大きな効果が見られている。従来の“なんでも屋”的な位置付けから、自分たちの仕事の価値や極める専門性を見出せるようになったことでキャリアの悩みや異動の相談をする社員が減り、約2~3%というIT業界の平均と比べても極めて低い離職率を実現。社員数は分社当時の153名から大幅に増加し、2015年4月には350名まで拡充する予定だ。
事業別組織から機能別組織へと大規模な組織変革を経て、専門機能会社としてより大きく成長を遂げたリクルートテクノロジーズ。今後もエンジニアの飽くなき探求心を満たす環境づくりを追求し、リクルートグループ全体のIT事業を支え続けていくことだろう。
山村大●やまむら・だい
リクルートテクノロジーズ執行役員、兼、リクルートホールディングス IT戦略室 室長。1979年、北海道出身。2005年リクルートへ中途入社。2012年4月 現在のリクルートキャリアIT企画部部長に就任。2012年10月のリクルート分社化に際しては、リクルートキャリアおよびリクルートエージェントの2社合併に伴うITシステム及び組織統合プロジェクトを推進。2013年4月リクルートテクノロジーズ執行役員、兼、リクルートホールディングス 全社IT人材開発プロジェクトリーダーに就任。2014年4月より現職。