政府思惑「賃上げすれば増税しやすい」
気になる記事があったら、ネットで発表者のサイトを見るといい。サイトには賃上げ調査に関する詳細なデータが載っているものだ。その中で是非ご覧頂きたいのは「調査票」だ。チェックすべきは、調査票に、どんな質問項目が載っているかだ。例えば「今年、ベアを実施しますか?」「今年定昇を実施しますか?」などという質問が載っている。
ここで重要なポイントとなるのは、中小企業ではそもそもベアと定昇が分かれていないことがほとんどだということだ。また、ベアと定昇の違いがわからない人も多いだろう。その場合、質問票を送ること自体がナンセンスではなかろうか。まして“賃金改善”などと言われて意味がわかる人は少ないだろう。
それに、経済団体や国がもっともらしく作り上げる「賃上げ調査」と称するもののほとんどは、会社員(回答者)の賃金明細表を1枚1枚照合しているわけではなかろう。そんな曖昧なデータに基づく「賃上げ」報道はいかがなものかと思うのである。
▼消費税を10%に上げやすくするための統計
安倍内閣は、アベノミクスの成果をアピールすることに躍起で、各種の統計データをフル活用して自らの政策の成功を証明したがっている。首相にしてみれば「アベノミクスにより景気は好転し、所得増につながっている」「所得の増加は大手から始まり、中小企業や非正規の従業員にまで及んでいる」と言いたいわけだ。
役人の本能は、税を取ることである。役人のホンネは「所得が上がったのだから、消費税率を10%に引き上げることを受け入れて欲しい」ということだと、私は見ている。
内閣や役所が発表するデータは、為政者の意図が隠されている。都合の良い情報ばかり流したがると言う点で、昔の大本営発表と似た部分もある。国民はそのような「思惑」まで見通して欲しい。